2026年6月10日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年6月10日

 4人目は、スフミ・ダスコ・アフマド(58歳)。グリンドラ党の重鎮で、国会副議長。昨年の暴動の際には、労働組合や学生の政府への要望を直接聞き、大統領を護って前面に立った。

求められるインドネシア的民主主義の成熟

 インドネシアでは「強権政治」が強調されるが、ジョコウィ前政権では、メディアを使い極めて頻繁に世論調査を行い、主要政策への国民の反応などをきめ細かにフォローし、対応を微調整していた。それに加えジョコウィ大統領自身が時に大衆の前に姿を現し「対話」していた。同政権の高支持率は、このような舞台裏の努力で支えられていたのである。

 一方、プラボウォ政権は違う。世論調査も公式・非公式を問わず、ほとんどやっていないのではないか。看板政策の一つである無償給食については、保険省との連携が無く、結果として食中毒などが頻発しているが、そのような看板政策の「悪い」情報は、大統領には上がらない。

 政治面では、議会の総与党化は、プラボウォが始めた訳では無く、ジョコウィの場合も同様で、インドネシアの「伝統」だ。その一方で、合意形成には時間がかかり、大政翼賛会ではない。

 また、結局昨年のデモでは、ネットのインフルエンサーが数百万人の参加者の要望を17+8の要望にとりまとめコンセンサスを形成、それを政府に申し入れることで、解決に向かった。これこそが、インドネシア的民主主義の成熟であり、この点はほとんど心配しなくてもよいのではないか。

 一方、経済については、明らかにプライオリティを間違えている。今は、投資を呼び込み、インフラを整備し、人材育成に努め、経済の規模を拡大すべき時であり、無償給食等のバラマキ=分配を強化する時ではないはずだ。
トランプ相互関税を受け、マレーシア、ベトナム、タイなどは投資を呼び込んで、貿易も逆に拡大したらしいが、インドネシアでは、そのプラス転嫁は極めて限定的だったようだ。

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