穏やかな瀬戸内海に面する愛媛県今治市は、今治造船をはじめとする企業が集まる国内有数の造船の街。この街の地場産業を陰で支えるのが、毎年多くの生徒を造船業界に送り出している県立今治工業高校である。
5つある学科のうち、機械造船科の「造船コース」の生徒数は例年30~40人ほど。そのうち9割以上の生徒が、今治造船や新来島どっくなどの地元造船会社に就職するという。
「日頃から地元の造船会社と多くの接点を持っていることもあり、入学当初は、機械造船科のもう一つのコースである『機械コース』を希望する生徒が多いのですが、1年生後半のコース分けの段階ではそれが逆転し、『造船コース』を選ぶ生徒の方が多くなります。最近では、造船会社の求人が大手自動車メーカーなどとも引けを取らない待遇になりつつあり、親御さんの安心感も高まっています」
そう話すのは同校の卒業生で現在、機械造船科長の藤原清人先生である。3年前に母校へ同科の科長として赴任した。学生時代は電気科で学び、造船は初めての経験だという。
「赴任してから生徒と一緒に、いちから造船を学びました。まずは溶接やクレーンなどの資格を取り、船舶工学や船舶計算、船舶工作の3つの座学は他の先生の授業を生徒の後ろで聞かせてもらいました。地元企業の方を招いて実技指導をしていただく授業でも、教員たちも生徒と一緒になって学んでいます」
同校では年間25回、「匠の技教室」と題した実習の中で、地元企業の技術者から生徒が直接指導を受けられる機会を設けている。造船技術において中心的な役割を担うのは「溶接」だが、中でも、厚い鋼板をガスバーナーで加熱後に水で冷却することで収縮させて曲面を作り出す「ぎょう鉄」は、特に高度な技術を要する職人技だ。
「匠の技教室では、地元企業の新来島どっくさんから、〝ぎょう鉄マイスター〟を迎え、手取り足取り指導いただいています。ぎょう鉄を行える設備を持つのは、工業高校の中ではわが校が唯一です」
