「人口減少、おめでとうございます」と言えば、「奇をてらっているのか」、「何かの皮肉か」とお叱りを受けそうだ。
しかし1970年代の日本では、専門家や政府関係者が人口減少を目指した。当時の社会課題は人口増加。1億人を超えた総人口の食料やエネルギーをどう確保するのか。公害問題やオイルショックも経験した。このまま人口が増え続けるとどうなるのか──。
74年に政府が出した『人口白書』のテーマは「静止人口をめざして」であった。人口の増加を止め、減少へと転じ、いずれは静止へと着地させよう。そんな未来を目指していた。直後に開催された「日本人口会議」では、参加した専門家たちによって「子どもは2人まで」という大会宣言が採択された。
だからといって、すぐに人口が減ったわけではない。じわじわと出生率が下がり、30年ほどたった2005年にようやく人口減少が達成された。第一関門突破である。
あとはしばらく人口を減らし、「よきタイミング」で「出生率を少しだけ上げ」、2人の大人から概ね2人の子どもが産まれるような「静止人口」状態を狙うだけだ。ところが、この「第二関門」には難しい問題が二つ含まれている。①「よきタイミング」とはいつのことなのか。②どうやって「出生率を少しだけ上げ」るのか。
1974年の総人口は約1億1000万人。とりあえずこの人口まで戻せば「よきタイミング」といえるか。いや、それが日本の適正人口だという根拠はない。この国土面積で1億人以上の人が暮らすというのが、本当に無理のない、持続可能な社会を実現させるための前提条件なのか。
この国土に降った雨だけで野菜や穀物を育て、それらを使って家畜を育て、良質な飲料水も確保するとして、1億人分の食料が十分に賄えるものだろうか。
日本は長い時間をかけて農村部から都市部へと人口が移動してきた。戦前に20%ほどだった都市人口比率は、いまや90%に近づきつつある。総人口の9割が都市に居住する時代である。当然、農業従事者の減少や高齢化は避けられない。耕作放棄地が広がり、そこに太陽光パネルが設置される。エネルギーの自給は大切なことだが、食べるものが足りないのなら未来はそれほど明るくない。
