2026年3月20日(金)

Wedge REPORT

2026年3月20日

もう間もなく日本のGDPを抜き去る勢いの、世界随一の成長市場、インド。この14億人市場の巨大な需要による引力に、多くの日本企業が惹きつけられています。ただしインドは無比の可能性を秘めるのと同時に、無数のビジネス上の「インド・リスク」をも内包しています。本連載では経済・文化・権力構造の各分野の「インド・リスク」を分析していきます。

*本記事は、『インドビジネスのオモテとウラ 14億人市場の「世界でいちばん面倒くさい国」』(ウェッジ)から一部抜粋、編集の上掲載しています。
(Marcos Galinari/gettyimages)

 インド統計・事業実施省(MoSPI)や国際通貨基金(IMF)が公表している実質GDP成長率は、新型コロナウイルス蔓延の影響を受けて、2020年は大きなマイナス成長でしたが、2021年度は9%台のⅤ字回復となり、その後も6〜8%台の高水準な成長率を維持しています。

 何はなくともこの高い経済成長率は、ビジネスパーソンにとって強いインドの魅力になっています。しかし、インド社会には日本人にとって理解しにくい摩訶不思議な構造的問題が根深く存在しています。日本企業や日本人ビジネスパーソンが、インドとうまく付き合うためには、その問題を事前に知っておく必要があるでしょう。光に覆い隠された暗部にもしっかりと目を向けることで、インドを適正に評価できるはずです。相手の良いところも悪いところも理解してこそ、真の交流が生まれるはずです。

 本連載ではインドの「暗部」に思いっきり注目していきます。

 まずは、程度の軽い闇から。インドは平均年齢28.2歳の「若い国」でありますが、そのインドの若年層が働けなくなっているのではないか、という話です。

 なぜ「若い国」であることにプラスの経済作用があるのかといえば、粗く語れば生産年齢人口が多ければ自然と労働力人口は増え生産力増強に直結しますし、若者が目新しく旺盛な消費を生み出し、経済活動はグルグルと回り巨大な成長エンジンとなるからです。

 この経済成長目線で好ましい人口動態の状況を「人口ボーナス」と呼ぶわけですが(その逆に日本などの労働力人口が減り社会保障費も増加する少子高齢社会を「人口オーナス」期と呼びます)、今のインドは高学歴でありながら労働に従事しない、ないしは従事できない若者が多く、そうこうしているうちに人口ボーナスが消失してしまうのではないかという危険性が主張されています。

 人口ボーナス期に経済成長の階段をなんとか上の方まで登っておかなければ、今の日本以上に高齢化社会の問題が大きくなるでしょう。最大級の経済成長エンジンの破壊は致命的です。

にっちもさっちもどうにも失業率

 国際労働機関(ILO)が2024年3月に出した報告書に記されていた「全失業者のうち、若年層(15~29歳)が約83%を占める」という数字は衝撃的なものでした(※いくつかの日本国内に転載されたメディアでは「若年層世代の失業率が83%」という誤った表現がありました。それは意味がまったく異なる誤報・デマです)。あまりにも世代偏重な失業率の高さは社会不安の原因になり、政策運営の失敗とも言えます。


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