2026年3月20日(金)

Wedge REPORT

2026年3月20日

 とりわけ報告書のタイミングがインド総選挙直前であり、2期首相を続けたモディ氏への大きな批判文脈になるため、政権側はこうしたメディアでの取り上げられ方にブチギレていました。政府当局側の反論見解としては、インドの若者の35%は学生であって、22%は家事労働に従事しており、その多くが報告書に計上されていない少数雇用に従事しているため「失業者」に分類できない、というものでした。またILOの報告書が国際的な移民の動向やギグワーカーやプラットフォームワーカーの急増を捉えていないとも指摘しています。

 具体的な数字を見てみましょう。ILOが発表した2023年の世界の15~24歳の失業率は13%でした。同レポートでインドの15~24歳の失業率は15.79%(2023年)となっており、インドの若年層失業率は世界水準よりも高くなります。インド経済が若年人口増に見合うだけの雇用創出ができていない状況を表しています。またILOは、都市部と農村部の失業率を比較し、都市部の教育を受けた若者で失業が顕著と分析しています。

 一方で、インド政府が実施している定期労働力調査(PLFS、2017年度から導入された全国規模の雇用・失業調査)によれば、2023年度における国内の15~29歳の若年失業率は10.2%でした(※ILOとは年齢区分が異なります)。PLFS開始当初の2017年度が17.8%、その後2020年度が12.9%、2021年度が12.4%、2022年度が10%と低下傾向が見られます。

 民間のインド経済モニタリングセンター(CMIE)のデータでは、近年の20~24歳の失業率は40%台前半、25~29歳では10%台前半の推移となっており、20代前半がやけに高い数値になっています。PLFSのデータと食い違うところがありますので、複数のデータを網羅的に把握することが求められます。

農村部では調査も至難

 PLFSは地域ごとの失業率の差異も浮き立たせています。その主な要因は農業が主要産業であるか否かです。例えば、茶葉生産で有名なアッサム州での失業率(15歳以上の全世代)は27.5%、同じく農業が主要産業であるビハール州は26.4%となっていて、技術革新がなく生産性が低い農業が、アッサム州やビハール州の位置するインド東北部経済を厳しい状態に置いています。

 PLFSの統計に利用されるデータのうち、都市部と農村部では調査手法が異なり単純比較不能で、特に農村部では、サンプルが入手困難であるケースも多く、再訪問が行われなかったり、評価方法が変更されて時系列的比較が不能になったり、サンプルサイズが非常に少なく20未満のところもあるという報告もあります。紅い某国のようにデータがマニピュレート(意図的操作)されているかどうかはともかく(※一部インドメディアはインドでもマニピュレートされている可能性も指摘しています)、インド政府当局による調査であっても信頼性の高い統計とは言えないケースもあります。

 ILOや民間のCMIEからはインドの若年層失業率は世界より高いとデータとして突きつけられているのに対して、インド政権側は、PLFSなど自国の官製データを「つくり始め」ました。自らの政権運営によって毎年失業率は低下しているし、世界よりもむしろ失業率が低くなってきた、と反論主張したい政権当局側の政治的気配を感じます。「つくる」というのは2017年から調査開始されデータがつくられ始めたことと、マニピュレート疑義の二重の意味があります。


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