2026年2月13日(金)

インドから見た世界のリアル

2026年2月13日

 アメリカのトランプ大統領とインドのモディ首相は2月2日、アメリカとインドの間で貿易合意が締結されたことをSNS上で発表した。その時点では詳細は不明だったが、その後、徐々に内容が明らかになりつつある。

 インドからアメリカへの輸出品にかかる関税を50%から18%に下げ、インドはロシアから原油を輸入を大幅に減らす、様々な分野の関税撤廃や規制緩和などが含まれる合意のようだ。ただ、2月11日の時点では、まだ細かいところで決まっていないことも多いらしく、一部の文言が変化しているので、大枠で合意した、ということなのだろう。

(AP/アフロ)

 この合意は、米印関係を変えるターニングポイント(転換点)といえるものである。米印関係はかなり感情的な対立になり、合意のめどが立たない状況になっていたからだ。

 どのようにして突破口が開かれたのだろうか。今回の合意の背景をみると、インドの交渉における強みが反映されたことが考えられる。本稿では、今回の交渉に見られるインドの交渉スタイルについて分析することにした。

インドの強み①有利になるまで永遠と待つ

 インドの交渉スタイルの特徴は、えらく時間がかかることである。時間に間に合わないことも多い。

 インドの首都デリーに地下鉄を作った際のエピソードは、インドでは有名である。このプロジェクトは、日本の政府開発援助(ODA)のプロジェクトで、日本人が主導したのだが、そのものすごい努力と手腕で、なんと予定より早く完成させてしまった。そのため、主導した日本人は、「インド史上初めて、予定より早く実現した人」として、インド中で有名になってしまったというエピソードがあるほどだ。

 そもそもインド人は急がない。急いでも、他の人が協力してくれないと、結局、間に合わない。だから、自分だけ急ぐのは損なので、急がない。全員がそう考えるので、全員が急がない。結局、期限ぎりぎりになってから、みなピンチになって、ようやっと仕事するのである。

 普通に考えれば、これはよくない。ところが、交渉においては、必ずしも悪いわけではない。状況が不利な時もあせらず、有利になるまで待つことができるからだ。

 今回の米印貿易合意では、それが起きた。インドにとってアメリカは最大の貿易相手国であった。だから、関税が50%も課された時、アメリカと貿易していたインド企業は窮地に陥った。ビジネスは縮小し、従業員も雇えなくなっていった。

 だからこそ、アメリカに譲歩してもおかしくない状況になった。でも、インド人は急がない。

 こうして、交渉は長くなっていったが、結果、状況は有利に変わっていったのである。状況が有利に変わったのは、アメリカと欧州連合(EU)との関係に変化が生じたからである。


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