モスクワを初めて訪問したのは、まだ総合商社に勤務していた2000年頃だ。建物の先端がとがっているスターリン様式の代表的建物とされるロシア外務省近くのホテルに宿泊したこともあり、欧米諸国とは異なる街の雰囲気を感じた。
翌日モスクア事務所のロシア人スタッフと昼食を食べに行くことになったが、向かったレストランは米国に本拠を置くピザハットだった。
ロシアでの資源開発、その後温室効果ガス削減事業を担当したため、何年もの間モスクワに出張し、企業、政府関係者と面談することが多くなった。やがてスターバックスが人気になり面会場所に指定されることもあった。
そのピザハットもスターバックスも、22年のロシアのウクライナ侵攻後ロシアから撤退した。ロシア企業が後を継いでいるようだ。
ロシアの侵攻後、撤退する日本企業も多くあった。トヨタ、日産など日本の自動車会社は資産を現地の企業に譲渡し相次いで撤退した。その後は、中国企業が日本車のシェアを埋めた。
企業がロシアから撤退した主な理由は、世間から非難されることを恐れたレピュテーション・リスクと不透明な事業環境だ。ロシア政府に税金を納め戦争を間接的に支援することを良しとしない企業もあっただろう。
しかし、依然ロシアで事業を継続している欧米日企業も多くある。ウクライナはロシアを間接的に支援していると、撤退しない企業を非難している。対象には日本企業も含まれる。
金銭面で支援しているのは、ロシアから化石燃料を購入している国もだ。欧州連合(EU)も含まれるが、27年11月末をもってロシアからの天然ガス購入を終了することをEU理事会と議会が合意した。原油についても全面禁輸の意向だ。
年により変動するが、ロシアの国家収入の4分の1から2分の1は化石燃料の収入とされる。欧米日は、ロシアにどれだけの資金を渡し、ロシアの戦争をどの程度助けているのだろうか。戦争が終われば、EUはまたロシアからエネルギー資源を買うのだろうか。
