軍事関係予算は、21年には歳出の24%だったので、大きく増えている。その分社会政策費は、38%から24%に、経済対策費などは18%から11%に減少した。
歳入不足のため付加価値税(VAT)が26年1月1日から2%引き上げられ22%になると発表されている。欧州の報道ではロシア国民の負担により戦費を賄うのかとの非難もみられる。
燃料輸出の金額は減少傾向とは言え、依然ロシアの戦争を支えている。ロシアに制裁を課すEUはロシアからの化石燃料の購入を全て止める方針を明らかにした。
脱ロシア産化石燃料を進めるEU
25年6月に欧州委員会は、27年末を以てロシアからのLNGを含む天然ガスの輸入を終了する案を発表していたが、12月3日に欧州理事会と議会は委員会の提案を一部修正しロシア産天然ガスの輸入終了について合意した。
LNGとパイプライン経由の天然ガスのスポット契約に基づく輸入は、それぞれ26年4月25日と6月17日から禁止される。LNGの長期契約に基づく輸入は27年1月1日から禁止される。長期契約のパイプライン経由の輸入も27年11月1日以降禁止される。
原油についても、欧州委員会が年明けに全面禁輸を提案する予定と報道された。27年末を以て禁輸する意向とされる。
欧州委員会のダン・ヨルゲンセン・エネルギー・住宅問題担当委員は、禁輸について次のように述べている。「たとえ平和が訪れたとしても、欧州はロシアのエネルギーには決して戻らないだろう。ロシアとウクライナの間で和平合意が成立した後も、禁輸は続く。ロシアの天然ガスに依存するという過ちを決して繰り返してはならない」。
天然ガスの輸入禁止については、ハンガリーとスロバキアが反対したため加盟国すべての同意が必要な制裁措置ではなく、貿易措置として実施される。
ヨルゲンセン委員は、「反対した国については理解ができない。我々は肩を並べてプーチン大統領に対抗すべきだと思う。欧州委員会は供給途絶のリスクがあるすべての加盟国を支援する用意がある」とも述べている。
EUは脱ロシア産エネルギーを実行しロシアへの資金提供を断つが、依然ロシア国内で活動し、ロシア政府に税金を納めている企業も多くある。
ロシアで活動する企業が納める税金
ジェトロ(独立行政法人日本貿易振興機構)は、ロシアに進出した日系企業を対象に毎年実態調査を実施している。25年9月の78社を対象とした調査(ジェトロ 2025年度 海外進出日系企業実態調査(ロシア編) ―情勢改善の兆し見えず、中国企業の存在感拡大に警戒― | 2025年 - 記者発表 - お知らせ・記者発表 - ジェトロ)では50社から回答を得ているが、ロシアでの事業環境は以下のように厳しさを増しているようだ。
・25年の営業利益見込みを「赤字」と回答した企業の割合は50.0%
・「黒字」を見込む企業の割合は13年の調査開始以降過去最低値の24.0%
・今後1~2年の事業展開について、「現状維持」と回答した企業は76.0%
・最大の競争相手は、地場企業(40.8%)、中国企業(38.8%)。中国企業が台頭
ロシアで事業を続けているのは、日本企業だけではない。欧米企業も多く残っている。中には撤退を表明しながら事業を継続している会社もある。
キーウ・スクール・オブ・エコノミクスが中心になり、ロシアに進出した国際企業の現状を取りまとめ、24年の売り上げ、税額などの実績を発表した。私たちが知っている企業も多く登場する。
25年7月現在でロシアから完全に撤退した国際企業は503社。撤退を表明したものの完全には閉鎖していない企業が1377社。依然事業を継続している企業が最多の2326社、55%を占めている。
24年のロシアでの合計売上高は、2010億ドル(31兆円)、純利益は195億ドル。ロシア政府に支払った税額は少なくとも200億ドル。
ロシアでは、地域によっては1万8400ドルで新兵を雇えるので、ロシアへの税により100万人以上の兵士の雇用が可能になるとされる。
