半世紀前のベトナム統一、昭和のテレビ・新聞報道では……
2025年4月30日にベトナム政府は南北統一50周年記念を盛大に祝った。筆者が訪問した2025年の晩秋の時期でも各都市の中心街はベトナム国旗やホーチミンの肖像で溢れていた。
1953年生れの筆者は1975年4月30日の南北ベトナム統一当時は学生だったが、テレビ・新聞の報道は、まさにお祝いムードであったと記憶している。“正義”の北ベトナム共産党政府・人民解放軍と南ベトナム解放民族戦線(“ベトコン”)が、苦難の民族闘争の末に“米帝国主義”と“傀儡南ベトナム政府”という“悪”を打倒した、輝かしい民族の勝利として大々的に報道していた。
なにしろ、当時は日本の一流有名大学の高名な学者達が北朝鮮を訪問しては“金日成率いる北朝鮮は地上の楽園”と、マスメディアで堂々と語り、共産主義・社会主義を賛美することがフツウに受容されるような時代だったのである。
そんなメディアが盛り上げている単純な善悪論に対して、筆者はなんとなく胡散臭い感じがしていたが、今回ベトナムを訪問して当事者から話を聞くに及んで、長年のモヤモヤが少し晴れたように思う。
観光旅行中にベトナムが共産主義国家であると感じる外国人はいない?
筆者は2005年以降の過去20年間に今回を含めて合計4回ベトナムを観光旅行した。前回は2014年秋に1カ月弱ハノイからホーチミンまで周遊している。しかし、2005年~2014年の間の過去3回のベトナム旅行では、不思議なことにベトナムが共産主義国家であると意識したことはなかった。
外国人にもツーリストとしての行動には特段の制限がなく(もちろん公序良俗の範囲内において)、外見上は市井の人々も自由な生活を享受しているように思えたが……。そんな反省から今回の訪問においては、極力“共産主義国家ベトナム”を意識して体制国家ベトナム社会の実相を見聞しようと心掛けた。
共産党は庶民には縁遠い存在なのか
1月9日。ハノイのホステルで、ホステルの共同オーナーであるアラサーの独身女性経営者とおしゃべり。彼女に学校の同窓生や親戚知人に共産党員がいないか尋ねたが、心当たりがないという。
筆者は旅行中に多少なりとも親しくなったベトナム人には、本人が共産党員であるか、同窓生や親戚知人に共産党員がいないか質問した。結論から言うと本人自身が共産党員であったのは1人だけだった。また共産党員の同窓生・親戚知人はいないというのが大方のフツウの庶民の回答であった。
ハノイから南に100キロに位置するニンビン省の省都ニンビンの観光名所の土産物屋の20代後半の知的な女性は、やはり学校の同窓生には心当たりがなかった。ニンビン市が推進している観光特区の発展状況確認のため視察に訪れる市役所の若手幹部の共産党員とは、何度か会話したことがあると言った。それが彼女の知る唯一の共産党員であった。どうも何か釈然としないモヤモヤを感じた。
ベトナムの総人口は約1億人であり共産党員は520万人である。つまり単純計算すると国民20人に1人が共産党員ということになる。小中高の同窓生からは少なくとも数人程度が共産党員になり、公務員になっているはずである。ところが不思議なことに上記のように共産党員の姿が見えないのである。ベトナムではフツウの庶民には共産党は縁遠い存在なのだろうか。
中国には社会生活でフツウに共産党員がいるのだが
中国は人口約14億人に対して共産党員は1億人である。国民のおよそ15人に1人が共産党員である。筆者の経験では中国では普通の庶民に同様の質問をすると、共産党員は沢山いると必ず回答する。住民直接選挙で選ぶ町内組織(社区と呼ばれる町内会のような最小行政単位)の役員が共産党員であるし、会社や工場の幹部や学校の先生も共産党員であり共産党員は身近な存在なのである。ましてや中学高校の最優秀の同級生は大半が共産党員になっているので共産党員の知人は“沢山いる”という回答が一般的なのだ。
