2026年1月5日(月)

古希バックパッカー海外放浪記

2026年1月4日

(2025.7.2~9.24 85日 総費用34万2000円〈航空券含む〉)

大々的集団礼拝ではなくトルコ的自由礼拝がイスラム本来の姿ではないか

 筆者はイスラム教の礼拝というと、35年くらい前のイラン駐在員時代に見た金曜礼拝を思い出す。テヘラン市内の大きなモスクに数千人が参集して、一斉に礼拝する光景に圧倒された。また、出張で訪れたサウジアラビアのメディナのグランバザール(中央市場)でアザーンの朗誦が聞こえると、慌てて店を閉めて店で働いている全員が、モスクに走る姿も印象的だった。それがイスラム教の礼拝のイメージとして焼き付いていた。

 しかし、深く考えれば当時のイランやサウジのそうした大々的な集団礼拝は、“社会的同調圧力”により、半ば強制されたものだったのだ。それゆえ、トルコのモスクの早朝礼拝や就寝前礼拝に参集する人数が少ないことを以て、トルコ庶民のイスラム信仰を軽んじることは、間違いである。筆者はむしろトルコの庶民が忙しい時間を割いて、個人礼拝している素朴な信仰心に共感する。

ガザ地区のイスラエル軍からの解放を求めるメッセージ。イスタンブー ル始め各地のバザールではこうしたメッセージを頻繁に見かけた。トルコ人とアラブ人 と人種は異なるが同じイスラム教徒としてパレスチナに連帯しているのだ

異端のイスラム教徒なのか?「酒は大好きだが俺はイスラム教徒だ」

 8月19日。フェティエのビーチの無料キャンプ場。ベンツに寝泊まりしている正体不明の58歳の独身男。朝から赤ワインや缶ビールを片手に濁声で議論する、チェーンスモーカーだった。ところが、もう片方の手には数珠を持ち、アラーについて持論を展開する熱心なイスラム教徒であった。イスラム教が他宗教に優越する理由を滔々と語ったが、筆者も納得できるほど平易で理路整然としていた。彼はモスクで礼拝することはないが、信心深いイスラム教徒なのだ。

 9月18日夕刻。アランヤのホステルの部屋の前にあるバルコニーで、コンヤ近郊の村から出稼ぎに来ている青年と一緒になった。筆者はバルコニーで夕陽を見ながらビールを飲もうと思ったのだが、先客の青年は既に缶ビール2本目だった。彼はイスラム教徒であることに誇りを持っていた。「モスクに礼拝に行かないが、黄昏時にビールを飲みながらアラーの神に感謝を捧げているのだ」と真顔で語った。筆者も「夕陽に向かって仏様(ブッダ)に感謝しているのだ」と言ったら彼は大きく頷いて握手を求めてきた。

 欧米の男女の若者の大半が「自分は日曜日に教会には行かないが、キリスト教は自分のバックボーンであり、キリスト教徒であることが自分のアイデンティティーである」と語る。異端のイスラム教徒の信仰心と寸部の違いもない。

公園で缶ビールを飲んで警察に通報された

 イスラム教徒が99%のトルコでは、酒類の販売は政府の許可を受けた店に限定される。そして23時以降の販売は禁止されている。店で酒類を購入したら、店側で黒いビニール袋に入れて外部から見えないようにするのが普通である。公の場で酒類を持ち歩いたり、飲酒することはイスラム社会常識に反する行為としてタブーである。児童公園などでは飲酒禁止と明記している。

 筆者は知らずに児童公園で夕刻静かに缶ビールを飲んでいたら、市民が通報してパトカーが来たことがあった。警官は「街の中で人目につくところで飲酒すると“イスラム教徒を侮辱する行為”と怒る市民がいるので注意してください」と丁寧に説明して引き揚げた。

気兼ねなく飲酒できるメイハネ(居酒屋)、ビーチリゾート、結婚式

マルマラ海の浜辺の村のメイハネ(居酒屋)。遠目にはチャイハネ(喫 茶店)と見間違うがビールの空き瓶のラックが店先に積んであるのがメイハネである

 それではトルコで飲酒が容認される場所はどこか。トルコにはメイハネと呼ばれる政府認可を受けた居酒屋がある。料理とビールや伝統的蒸留酒のラキア(=ラク)を提供する。マルマラ海沿いの田舎の村のメイハネでは、昼間から7~8人の村人が煙草片手にビールやラキアを飲んでいた。ビールの値段はスーパーよりも2割ほど高かった。

 また欧米人観光客の多いビーチリゾートでは、ビーチでも街でも朝から晩まで自由に飲酒することが容認されている。当然トルコ人もアルコールをエンジョイしている。高級リゾートのボドラムのショッピングモールで、2人連れの学生風のトルコ娘が缶ビール片手に歩いていた。

 アイワルク近郊の町の結婚式の宴会場では、花嫁を独身男性達が囲んで踊るシーンがあったが、男達は缶ビールを片手に踊っていた。またテーブル席では老人たちがラキアで乾杯していた。どうも結婚式など祝い事の席では飲酒は許されるようだ。

独身男たちの踊りが終わって真打の花婿が花嫁と踊りだしたところ

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