1927年に大西洋単独無着陸飛行を成功させたチャールズ・リンドバーグは、31年、妻のアンと共に北太平洋横断飛行を敢行している。
大型機械部品の加工と機械装置の組み立てを得意とする関鉄工所の創業者・関松三郎さんは、この飛行でリンドバーグ夫妻が駆ったシリウス号を修理したことが自慢だった。
三代目社長の関英一さん(54歳)が言う。
「祖父は北海道の根室出身で、腕のいい旋盤工でした。詳しいことはわかりませんが、リンドバーグの飛行機は俺が直したんだと、よく従兄連中を前に語っていました」
調べてみると、リンドバーグ夫妻は7月27日に米ニューヨークを発ち、カナダ、カムチャツカ、千島列島を経て8月24日、たしかに根室湾に着水している。根室市民は世界が注目する冒険飛行の主人公を熱烈に歓迎したが、その熱狂の中に松三郎さんの姿もあったのだろうか。
その後松三郎さんは伝手を頼って上京し、たった一台の旋盤で機械部品をつくる工場を立ち上げる。
戦後、高度成長期が訪れると、他社が手を出さない大型の機械部品加工を手がけるようになって、関鉄工所は急成長を遂げた。二代目社長の輝武さん(84歳、現・会長)の時代は、「猫の手も借りたい大繁盛だったそうです」と英一さんは笑う。
英一さんの当代も仕事は尽きないが、ある難題に直面している。
「小型の部品は万力で押さえるだけで加工できますが、大型部品はボルトで固定しないと加工できません。実は、加工の手順を考えて固定するのはとても難しくて、どうしても職人肌の人材が必要なんです。いまは、加工機械を持っていても使える職人がいない会社が多いのですが、幸いうちには腕のいい職人もいるし、若手も育てているんですが……」
英一さんはちょっと口ごもった。
「(若手から)高度成長期のような返しは期待できないというか、打てば響くとはいかないみたいですね」
今回のつくりびとは、その腕のいい職人・浜崎康則さん(74歳)と若手・佐藤光汰さん(25歳)のふたり。歳の差、実に50年のバディである。
