2026年2月28日(土)

つくりびととの談い

2026年2月28日

なぜ「恐れる」のか?
Z世代が背負ったもの

 後日、佐藤さんの気持ちを掘り下げたくて、関鉄工所を再訪した。

 どうやら品物の固定に時間がかかるようだが、何がネックなのか。

材料を削る際には「矢」と呼ばれる銅を挟み込み固定する。銅は柔らかく、品物に傷が付きにくい

 「加工材料はお客様のものだから失敗すれば弁償になって大赤字だし、固定の仕方が甘いと、刃物を当てた瞬間に品物が飛んで機械を壊してしまうかもしれません。だから、どうしても慎重になってしまうんです」

材料の表面を削り、厚みを整える。材料ごとにある「ねじれ」を取り除くことで精度を高めていく

 刃物の送り(品物に当てる速度)も遅いと、浜崎さんは言っていた。

 「送り速度は、基本的には機械に入力して設定しますが、入力した速度の0~200%の範囲で細かく調整できます。以前、負荷の量に対して送りを速くし過ぎて刃物を折ってしまったことがあるので、送りが速いと怖いんです。僕の場合30%くらいから徐々に上げていくので、どうしても遅くなってしまいます」

浜崎さん「やっちまったもんは仕方ねぇ」と失敗には寛大だったが。

 「まだ、全部任せてもらえるケースが少ないので、どうしても失敗が目立ってしまう。失敗するとまたダメだったという思いが強く出てきて、気持ちがオチてしまうんです。いまだに失敗するのは恐いです」

 おそらく佐藤さんに、トライ&エラーでいいんだなどと檄を飛ばしてみても、響かないのだろう。

ドリルで品物に穴をあけていく。刃物自体の温度が上がると「なまる」ため、油をさしながら扱う

 佐藤さんの属するZ世代は、過度に失敗を恐れると言われる。容易に最適解が手に入る時代に、自分だけ選択を間違えるのは耐えられないからだと解説されている。しかし、佐藤さんが失敗を恐れる理由は、別にある気がした。

 彼らは「自己責任」という言葉を、幼い頃から刷り込まれてきたのではないだろうか。何をやるのも自由だけれど、結果を引き受けるのはあなた自身ですよと。

 それが当然だと言われそうだが、かのリンドバーグは根室到着前、天候不良やエンジンの不調で何度も不時着をしては、救援を受けている。冒険にも、ものづくりにも失敗はつきものなのだ。

 機体修理に駆けつけた松三郎さんは、きっと自己責任なんてケチなことは言わずに、浜崎さんと同じセリフを叫んだことだろう。

 やっちまったもんは仕方ねぇ!

左から順にスケール、ノギス、外径マイクロ、内径マイクロ。「30年は使ったね」と浜崎さんが愛着込めて話す
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Wedge 2026年3月号より
酷似する「戦間期」と現代 第三次世界大戦を防げ
酷似する「戦間期」と現代 第三次世界大戦を防げ

「新しい戦前になるんじゃないですかね」─。今から4年前、テレビ朝日の『徹子の部屋』でタモリさんが口にした言葉だ。 どのような意図で発言したのかはわからない。ただ、コロナ禍だった当時、全体主義体制を称揚するような空気が漂い、議会制民主主義の危機も顕在化し、「1930年代」に時代が近づきつつあると感じていた私は、その言葉に妙な〝重み〟を覚えずにはいられなかった。 昨今の様々な出来事を見るにつけ、その感覚は確信へと変わった。時代は、当時の「戦間期」を思わせる局面に入り、大国指導者が世界の行方、人類の運命を左右する時代になったのである。このままでは、最悪の場合、第三次世界大戦が起こる可能性も否定できない。 ただ、もし戦争になったとしても、大国指導者たちが戦場に行くことはない。いつも犠牲になるのは、市井の人々である。 英国を代表する歴史家、A・J・Pテイラーは、『ウォー・ロード 戦争の指導者たち』(新評論)最終章で日本のことを取り上げ、こう指摘している。「日本は戦争の指導者はただの一人もいなかった」 つまり、指導者不在のまま、日中戦争、太平洋戦争へと突き進み、日本は破滅したのである。当時、大衆も熱狂し、政治はそれに流された面もある。 一度始まった戦争を終わらせることは容易ではない。それは4年が経過したロシア・ウクライナ戦争を見れば明らかである。動乱の時代、今こそ歴史に学び、教訓、希望を見出し、この危機から「脱出」する必要がある。


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