2022年12月4日(日)

世界の記述

2022年9月12日

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宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

在欧ジャーナリスト。1976年生まれ。スペイン・バルセロナ大学大学院でジャーナリズム修士。『卵子探しています』(小学館)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞。『安楽死を遂げるまで』(同)で講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ・外国人ぎらい』(PHP新書)がある。
 

 日本は、どのくらい貧しくなっているのか。このことは、おそらく日本国内で暮らしていると、諸外国との比較が難しい分、あまりピンとこないかもしれない。しかし、国民全体の家計は、年々、厳しくなっていることは間違いない事実ではないだろうか。

高級ブランドショップに並ぶ観光客。今や日本人旅行者の姿は見えなくなっている(筆者撮影、以下同)

 1990年代半ばから欧米で過ごしてきた筆者は、日本の経済力が次第に衰えていく様子を、国外の人々の暮らしぶりと照らし合わせながら観察してきた。ヨーロッパを旅する日本人観光客や駐在員らは、当時、町中の至るところに溢れ、ありとあらゆる商業施設や飲食店を賑わしていたものだ。

 バブル崩壊前の90年時点では、日本の平均賃金は、英国やフランスよりも高かったのだから当然かもしれない。金遣いのいい日本人は、現地人にとってありがたい存在だった。しかし今では、その光景は、中国人と韓国人に入れ替わった感がある。

 ヨーロッパの若者たちは、ソニーやパナソニックがどの国の製品か知らず、トヨタもホンダも高級車という認識ではない。家電製品はサムスン、携帯電話はアップルやファーウェイ、車も起亜やテスラが主流になっている。時代は、ガラリと変わったのである。

 それにしてもなぜ、このようなことが起きてしまったのか。その背景を探ってみることにしたい。

ハイワーク・ローリターンになってしまった日本

 まず、欧州連合(EU)統計局が発表したEU加盟国の最低月給(2022年上半期)を挙げてみたい。

 ルクセンブルクが1707ユーロ(約24万4000円、以下すべて1ユーロ143円換算)ともっとも高く、2位のドイツが1516ユーロ、3位のオランダが1489ユーロ、4位のベルギーが1455ユーロ、5位のフランスが1417ユーロと続く。スペインは、1154ユーロ(約16万5000円)で8番目につけており、東京都の最低月給(約16万円)とほぼ同額だ。

 次に、経済紙「エクスパンシオン」が集計した過去20年間(2000年〜21年)の年間平均給与の推移を見てみよう。

 米国は3万5870ユーロ(約513万円)から5万3229ユーロ(約761万円)まで上昇。フランスは2万6712ユーロから3万9971ユーロ、ドイツは3万4400ユーロから5万2556ユーロまで伸びている。08年に経済恐慌が訪れたスペインも1万7319ユーロ(約248万円)から2万6832ユーロ(384万円)まで伸びている。

 ではこの期間、日本では、どのような変化が起きたのか。国税庁「民間給与実態統計調査」によると、日本人の年間平均給与(実質)は、461万円(2000年)から433万円(21年)へと収入が減少している。要するに、欧米では、インフレに直面し続けながらも、年間平均給与が100万から200万円近くまで上がり、下がった国はまず見当たらない。

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