2025年3月15日付のフィナンシャル・タイムズ紙社説は、トランプの雑多で相矛盾する経済政策は消費者や経済界の米国への信頼を失墜させるものだと警告している。

経済の減速や株価の急落もいまだ、トランプの過激な経済政策を阻むことにはなっていない。トランプは、むしろ目下の政策を一層強行しようとしている。
経済や市場の混乱について問われると、トランプは、「米国に富を取り戻す」過程での「移行期」は必要かもしれないと主張を曲げない。ベセント財務長官は「解毒期」だという。しかし、この「解毒」により、今や経済にはスタグフレーション(経済停滞とインフレ)の懸念が生じ、国際投資家の米国経済への信頼は失墜している。
最終目標が漠然とした「米国を再び偉大にする」ことだとしても、これまでの雑多な経済措置は政策実現のための整合的な理論を欠いている。一つの例は、トランプの関税だ。
この政策の狙いは、外国企業に米国内での工場建設を促し、製造業の雇用を復活させ、輸入関税の収入を減税に充てることにある。しかし、これらの目標は互いに矛盾する。もし生産が米国に移れば、関税収入は減少する。
もう一つの例は、マスクの「政府効率化省(DOGE)」だ。官僚制の行き過ぎの縮小は重要だ。だが、同省は自分達の努力に反することをしている。
最近、公共サービスの効率化のための技術活用推進チームが解雇された。内国歳入庁の職員の半減は、税金の徴収能力を低下させる。
トランプは、シェールオイル業界に「掘れ、掘りまくれ」と号令をかけながら、一方で、消費者のために原油価格を 50 ドル以下に引き下げたい。この価格では、米国のシェール企業にとって採算が取れなくなる。断続的な関税の導入など経済的不確実性を増大させることは、技術革新の促進や製造業の拡大を支援することにはならない。
最後に、トランプはドル安誘導のための「マール・ア・ラーゴ合意」とも呼ばれる計画を画策しているという噂がある。その狙いは、米国を輸出産業大国に転換させることだ。しかし、国際的な通貨政策の合意を取り付けることは至難だろう。さらに、政権内でもベセントは最近、財務省の「強いドル政策」は変らないと明言し、足並みは揃っていない。