トランプ氏はアメリカ大統領再就任後、次々と派手な政策を発表している。また、関税政策に見られるように政策の撤回や保留も次々と行っていて、トランプ氏自身や政府高官の発言にも事実関係の間違いも多い。今のホワイトハウスは政府の体をなしていないように見える。
20年ほど前、東南アジアや中東、アフリカ諸国などで国内紛争が激化していた時代に、その国の政府に正統性があり交渉相手としての資格があるかどうかの尺度としてガバナンス指標が使われた時代があった。使用されていた指標は概ね次のとおりである。
①民主主義②政治的安定③統治の実効性④法の支配⑤説明責任⑥腐敗の制御⑦国際社会への参画⑧社会資本(福祉等)の整備⑨開発投資(道路、鉄道等)
これらのうち①の民主主義は、意見の対立が議会等の場で十分に議論されているか、②の政治的安定は、国内の対立を調整するビルトインスタビライザー(財政面では累進課税など、景気加熱を避ける装置)が備わっているか、③統治の実効性は、国民の多数から支持あるいは認められているかなどいろいろな項目によって評価される。
もしトランプ政権をこれらの指標によって評価すると、かなり危険度の高い政府ということになる。特に関税政策は、乱暴さが際立っている。
一方、国内政策の面では、イーロン・マスク氏の政府効率化省(Department of Government Efficiency、DOGE〈ドージ〉)による公務員の一律削減策が乱暴で、リスクが大きい。関税政策については国際的な関心も強く、各国との交渉もあり、既に多くの解説がなされているので、その陰に隠れて見逃されがちな公務員の一律削減策の内容と効果を点検してみたい。