合衆国憲法、法律無視の執政をただちに転換すべきだ――。トランプ政権が次々に打ち出す破天荒な内外政策に危機感を抱いた各大学の大勢の政治学者たちがこのほど、大統領を糾弾する声明文を発表するなど、学会レベルで抗議の渦が広がりつつある。

政治学者らによる6つの指摘
ハーバード、コロンビア、プリンストン、カリフォルニア大学バークレー校など一流大学多数を含む全米の政治学者など合わせ1202人が去る2月22日付けで、連名による異例のトランプ大統領宛書簡を公開した。この中には、英国、カナダ、ドイツ、ポルトガル、トルコ、日本(早稲田大学)など国外著名大学の学者たちも少なからず名を連ねている。
学者たちは書簡の中で、トランプ第二次政権が合衆国憲法の柱ともいうべき「三権分立」と「チェック・アンド・バランス」機能を侵害している具体的ケースとして、特に以下の6項目に言及している:
・本来、連邦議会に帰属する歳出権のホワイトハウスへの移管に乗り出した。トランプ政権はその理由として「各政府省庁による無駄減らし努力が不十分であり、市民の税金を浪費し、ホワイトハウスの政策目標に合致していない」などと主張しているが、予算の支出削減について議会の同意も得ておらず、明らかに憲法および法律違反行為である
・トランプ大統領を様々な違反行為で刑事告発した多数の連邦捜査局(FBI)および司法省検察官多数を解任した。これらの措置は連邦法執行機能を政治化するものである
・行政府における予算の浪費、不正、管理不行き届きを監視するための独立機関である「監察官(Inspector General)」17人を解任した。これら監察官制度は議会の承認を得た「連邦監察官法」により独立かつ客観的な監督機関として設置されており、一方的な解任措置は、行政府の信頼性を損ない、公務員保護法に抵触する
・「政策見解の相違」を理由に、主要独立機関である「国際開発局」(USAID)を閉鎖に追い込み、議会予算権、公務員諸権利をないがしろにした。教育省その他の政府機関についても大ナタをふるっている
・「雇用機会均等委員会」「連邦労働関係委員会」などの独立政府機関の各委員長を任期中に追放処分にした。異議申し立てを受けた各裁判所では審理の結果、いずれも「大統領にこれら独立機関責任者処分の権限なし」との裁定を下している
・連邦政府の人事および給与システム管理を政府公務員でもない人物たち(イーロン・マスク氏率いる政府効率化省)に一任し、彼らに合衆国憲法への忠誠もさせず、連邦プライバシー保護法を無視し、秘密裏の行動を許してきている
書簡は上記のような独断的措置を列記し、「昨年11月選挙における(トランプ)勝利は、私たちに賦与された憲法上および法律上の秩序を大統領に専断的命令で転覆させる権限を与えてはおらず、歴史は、このような行為が民主主義と法による統治を侵害することを証明している」と断じた上で、「同政権がただちに軌道転換することを督促する」と結んでいる。