2025年3月20日(木)

経済の常識 VS 政策の非常識

2025年3月10日

 トランプ大統領とゼレンスキー大統領との会談は、記者たちを前にしての公開口論という見たことのない形で終わった。通常、首脳同士の記者会見とは、事前に高官同士で細部を詰めて、さらに首脳同士が話し合って、シャンシャンとできる形が整ってからするものだ。それぞれの首脳が短いスピーチをしてエールの交換を行い、その上で、記者からの質問を受け付けるというものだ。

 そもそも、トランプ氏は、アメリカはウクライナに5000億ドル(75兆円)の援助をしたと主張しているが、後述するように、実際の援助は1187億ドルである。このぐらいは詰めておかないといけない。記者の前で首脳同士が口論するのは見たことがない。

 なんであんな形を取ったのだろうか。あるいは、アメリカが意図的にゼレンスキー氏を激高させて恩知らずとののしり、恩知らずには援助しないというストーリーを作ったのかもしれない。そうだという意見もある(『追い出されたゼレンスキー「その日のすべてのことはトランプが企画したことだった」』中央日報/中央日報日本語版2025.03.04)。

トランプは欧州諸国をどう見ているのか(代表撮影/ロイター/アフロ)

 ゼレンスキー氏も、公然と反駁するのはいかがなものかと思ったが、トランプ氏の「お前は立場が弱いんだから俺の言うことを聞くしかないんだ」という言いぶりには驚く。だから、レアアース資源を安く渡せと言う訳だ。

 本当にこの方は、こうやってビジネスをしてきたんだなと思う。利益は倫理にかなったものでないといけないと説く「論語と算盤」が大好きな日本人が、報道を見る限り、トランプ氏のディールにあまり批判的でないように見えるのはなぜだろうか。

 アメリカは、人の弱みに付け込むような国ではなかった。日本の敗戦時、日本企業は資金に飢えて、海外の資本を入れたいと占領軍総司令部に申し出たのだが、それを総司令部は断った。

 理由は、日本が窮地にある時に、日本の企業の一部であれ、安く買いたたくのは、後に日本人の反感を買い、将来の日米友好のためにならないということだった。アメリカは、「論語と算盤」「聖書と算盤」を実践する国だったのだ。


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