また、国力は乏しくても「覚悟」があると思われる国もある。ポーランド、フィンランド、リトアニア、ラトビア、エストニアである。これらの国はいずれもロシアと国境を接し、侵略を受けた国である。ウクライナの次は自国と痛切に思っているだろう国である。
これらの国の「覚悟」は、購買力平価GDPに対する援助額の比で示すことができるだろう。これを示したのが図3である。
図を見ると、フィンランド、リトアニア、ラトビア、エストニアのウクライナへの援助額の対購買力平価GDP比率は高くなっているが、ポーランドの比率はヨーロッパの平均以下である。北欧の比率が高いことが注目されるが、バルト海でロシアの脅威を受けているからかもしれない。
力による「ディール」を許してはならない
ヨーロッパは力を尽くすべきだが、各国の総意を得て力を結集させることができないという反論もあるかもしれない。しかし、目的は共同防衛で、各国の国内政策の統一ではない。ここには、大国が覚悟を見せなければ成り立たないだろう。大店がより多くを寄付しなければ祭りはできない。戦争ならなおさらだ。
なお、トランプ氏が今、ロシアとディールすればそれで終わると考えているとしたらそれは誤りだろう。87年前の1938年、イギリスとフランスがミュンヘンでヒトラーに融和的姿勢を取り、チェコのズデーデン地方を差し出したが、それでは終わらず、ヒトラーはチェコスロバキア全土を侵略し、第2次世界大戦まで突き進んでしまった。
奇しくも本年2月にミュンヘン安全保障会議が行われたが、これが1938年のミュンヘン会議の再来にならないように願いたい。
武力による領土獲得が許されれば、ロシアはウクライナ全土を狙い、それはアジアにも及ぶだろう。アジアでは、中国に対抗できる国はない。日本の購買力平価GDPは、図2から分かるように、中国の18%でしかない。
「論語と算盤」も「聖書と算盤」ももはやない。立場の弱い奴は、ディールの餌食になるしかないと言われてしまったらどうしたら良いのだろうか。