2025年5月23日(金)

家庭医の日常

2025年4月27日

病気や症状、生活環境がそれぞれ異なる患者の相談に対し、患者の心身や生活すべてを診る家庭医がどのように診察して、健康を改善させていくか。患者とのやり取りを通じてその日常を伝える。
(amenic181/gettyimages)

<本日の患者>
I.Y.さん、41歳、男性、新聞社政治部記者。

「何か疲れが取れなくて、いつも眠たいんです。夜は眠りが浅くて、何度も目が覚めます」

「そうですか。奥さんから何か言われることはありませんか」

「いびきがうるさいって言われます。自分じゃわからないんですが、横を向いて寝るといびきがなくなるそうです」

 I.Y.さんは、妻と小学校に通っている2人の娘たちの4人暮らしで、私が働く家庭医診療所を家族ぐるみで利用している。これまでも4人の病気や健康の問題で色々な相談に乗ってきた。かれこれ10年ほどの付き合いである。

 今回はI.Y.さん自身の相談で、眠っても回復しない疲労、浅い眠り、そしていびきが主要な症状だ。このところ世界中で政治と経済が混乱していて「時間外の取材がハンパないんです!」と悲鳴をあげる。それで不規則な生活が続き過度な疲れでかえって熟睡できなくなっている、というのがI.Y.さん自身の「解釈」である。

 このような症状では睡眠時に呼吸障害を伴っていないかに注意が必要で、私は注意深くI.Y.さんに質問をしながら診察を続けた。

閉塞性睡眠時無呼吸

 日本では一般に「睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome; SAS)」または「睡眠時無呼吸」とだけ呼ばれることが多いが、睡眠に関連した呼吸障害(*注)については使われる言葉が若干入り乱れているので、最初に整理しておきたい。

 SASには、無呼吸中にも呼吸努力を伴い通常いびきがある「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome; OSAS)」と、呼吸努力を伴わない「中枢性睡眠時無呼吸症候群(central sleep apnea syndrome; CSAS)」がある。

 最もよくみられる病態はOSASであり、今回の話題の中心である。一方、CSASは心不全、脳卒中、重症腎不全などでみられる特殊な病態である。

 OSASは、特に北米などでは、一般の人の日常会話にも、そして疾患名としても「OSA(閉塞性睡眠時無呼吸)」が用いられることが多い。英国では、正式な疾患名としては「閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群(obstructive sleep apnoea/hypopnoea syndrome; OSAHS)」が使われるようだが、一般の人ではOSAも用いられる。

 ということで、ここではOSASではなく、よりシンプルにOSA(閉塞性睡眠時無呼吸)と呼ぶことにする。

(*注:ちなみに、睡眠に関連した呼吸障害を表す用語でさえも、日本呼吸器学会などが監修した『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020』では「睡眠関連呼吸障害(sleep related breathing disorder; SRBD)」と呼ぶが、日本循環器学会の『2023年改訂版循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』では「睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing; SDB)」と呼び、統一されていない)


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