2025年12月5日(金)

家庭医の日常

2025年4月27日

OSAの診断

 OSAの診断には、睡眠ポリグラフ検査(polysomnography; PSG、日本では「終夜睡眠ポリグラフ検査」とも呼ばれる)が大きな役割をもつ。

 PSGは、睡眠時に脳波、筋電図、眼球運動、呼吸、心電図、経皮的動脈血酸素飽和度、血液中二酸化炭素分圧などを同時記録して睡眠を評価する検査である。通常、一晩泊まりがけで検査を実施することになる。

寝るときに頭や身体にセンサーを付ける睡眠ポリグラフ検査(FG Trade/gettyimages)

 頭や身体の様々な部位に電極やセンサーを貼り付けて睡眠することを想像していただきたい。私も若い時に実習で検査を受けたことがあるが、被検者にとって身体的にも心理的にもなかなか負担の大きい検査である。

 簡易PSG検査や、海外では家庭用睡眠時無呼吸検査(home sleep apnea test; HSAT)と呼ばれる検査も利用できるが、実際の睡眠時間を正確に反映しないことや大脳皮質の覚醒や呼吸努力などの検出には限界があると言われている。

 米国睡眠医学会が2023年に発表した国際睡眠障害分類第3版テキスト改訂版(ICSD-3-TR)では、成人におけるOSAの診断基準は下記の通りである(細かい付帯事項はひとまず省略する)。

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終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)または家庭用睡眠時無呼吸検査(HSAT)で
(1) 1時間あたり15回以上の閉塞性優位の呼吸イベントが認められる場合は、それのみでOSAの診断が可能
(2)1時間あたり5~14回の閉塞性優位の呼吸イベントが認められる場合は、以下の1つ以上があればOSAの診断が可能
① 眠気、疲労、不眠症、またはその他の症状による睡眠関連のQOL(生活の質)の低下
② 息止め、あえぎ、または窒息を伴う覚醒
③ ベッドパートナーまたは他の観察者がいびきおよび/または呼吸中断を報告
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*重症度は、無呼吸低呼吸指数(Apnea-Hypopnea Index; AHI、1時間あたりの無呼吸低呼吸イベント回数)を用いて、軽症 = 5~14回、中等症 = 15~29回、重症 =30回以上、と判定される

スクリーニングすべきか否か、診断すべきか否か

 米国予防医療専門委員会(US Preventive Services Task Force; USPSTF)は、OSAのスクリーニングについてのシステマティック・レビューを22年11月15日の米国医師会雑誌『JAMA』)に発表した。そこでは、一般成人集団を対象としてOSAのスクリーニングを実施することの有益性と害のバランスを評価するにはまだエビデンスが不十分であると結論付けている。スクリーニングをすべきだとも、すべきでないとも、エビデンス不足でどちらとも言えないということだ。

 人間ドックや各種健診で無症状の人にPSGを実施することは薦められない。一方で、実施しない方が良いと推奨することもできない。

 だがこれは、I.Y.さんのような症状があって受診した人に、OSAがあるかの診断をするためにPSGを検査すべきか否かを評価することとは異なる。

 今までの本連載『家庭医の日常』でも何回か書いているように、スクリーニング(検診/健診)とは「ある疾患によると考えられる症状がまったく無い人に対してその疾患に罹っている可能性がどの程度かを調べること」である。ある症状をもつ人にその症状を起こす疾患がないかの診断を進めていくこととは異なることに注意しなければならない。


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