2025年3月14日(金)

深層報告 熊谷徹が読み解くヨーロッパ

2025年3月14日

 ドイツの高級スポーツカー・メーカー、ポルシェが苦戦している。2024年の全世界の販売台数が2万台近く減った一因は、同社が中国市場でユーザーが求める車を開発できなかったという事実がある。巨大市場でユーザーが求める電気自動車(BEV)開発の波に乗り遅れた、名門メーカーの苦悩が浮き彫りになっている。

ポルシェが中国市場を中心に苦戦を強いられている( VTT Studio/gettyimages)

当期利益が約30%減少

 3月12日、ポルシェのオリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)とヨッヘン・ブレックナー財務担当取締役は24年の業績を公表した際に、「我々は手堅い業績を生むことができた。しかし市場は試練に満ちていた」と述べた。

 確かにこの日ポルシェが発表した業績は、ブルーメCEO、そして株主たちにとって手放しで喜べるものではなかった。最も痛いのは、本業のもうけを示す営業利益が23年の72億8400万ユーロ(1兆1654億円・1ユーロ=160円換算)から、24年には56億3700万ユーロ(9019億円)に22.6%減ったことだ。当期利益も23年の51億5700万ユーロ(8250億円)から24年には35億9500万ユーロ(5752億円)に30.3%減った。

 ポルシェは営業利益率では、フォルクスワーゲン(VW)グループの優等生である。それでも、長期的に営業利益率を20%と目標にしていながら、23年に18%だった営業利益率は、24年には14.1%に悪化してしまった。このため「我が社の中期的な営業利益目標を15~17%にする」と説明している。

 投資家の間では、ポルシェの路線に対する警戒感が強まっている。3月12日に24年の業績が発表されると、同社の株価は一時約4%下がった。同社の3月12日の1株当たりの株価は54.46ユーロで、24年4月中旬の約96ユーロに比べて、43%も低い。

 ポルシェは今年2月、ルッツ・メシュケ財務担当取締役とデトレフ・フォン・プラーテン販売担当取締役を更迭した。2人の取締役を更迭する人事は、異例だ。業績低迷と株価下落が原因だ。


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