ポルシェは今後どのような針路をとるのか。ブルーメCEOは、「直ちに生産・販売体制をBEVに一本化するのではなく、当分の間、内燃機関の車、ハイブリッド車、BEVを並行して生産・販売する混合体制を続ける」と語っている。
ドイツをはじめとして多くの欧州諸国でBEVの売れ行きが低迷する中、各メーカーは、「長期的には、BEVが新しいモビリティの中心になるだろう。しかし内燃機関の車とBEVが混在する時代は、当初予想されたよりも長く続くだろう」という見解を持っている。
VWグループとしての経営課題も
もう一つ、ポルシェが答えなくてはならない問いがある。それは、「いつまでポルシェのブルーメCEOが、VWグループ全体のCEOを兼務するのか」というテーマだ。ポルシェは、VWグループに属する企業の一つである。その企業と、グループの総帥が同一人物というのは、ドイツの経済界でも珍しいケースだ。
ポルシェの株価の低落傾向と、収益率の低下が止まらない今日、ドイツのメディアによると、一部の株主は「ブルーメ氏がポルシェのCEOも兼務することは、ガバナンスの面から問題があるのではないか」と指摘している。
現在VWグループ自体でも、大規模なリストラが行われている。ドイツ国内の乗用車部門を中心に営業利益率が低下していることから、同社は国内の2工場での自動車の生産を段階的に停止し、30年までに従業員数を3万5000人減らす。ブルーメ氏にとっては、VWグループの舵取りだけでも極めて重い任務なのに、今後は中国事業の立て直しをはじめとして、ポルシェについても根本的な収益改善を迫られる。
ポルシェの株価が上昇傾向に転じ、順調な成長基調を回復するまでには、まだ当分険しい道のりが続きそうだ。