インドでは、依然として二輪車が主流の移動手段となっている。一般的に、一人当たり国内総生産(GDP)が3000ドルを超えると、二輪車から四輪車へのシフトが進むと言われているが、インドの一人当たりGDPは2024年時点で約2700ドルにとどまっている。四輪車が一般層に広く普及するには、まだ時間がかかると考えられる。
実際、24年のインド国内の自動車の販売台数は、商用車を含め約523万台。同等の人口を有する中国では約2558万台が販売されており、その差は約5倍に及ぶ。10分の1以下の人口である日本が442万台(軽自動車含む)であることを考えると、依然として自動車市場の成熟には程遠いことがわかるだろう。
これに対し、二輪車の市場は大きい。インドにおける24年の二輪車販売台数は約1954万台で、前年から15%増加する。急成長を続けるインド経済で、ここ数年は二輪車が移動手段の主役であり続け、注目市場の一つとみられる。
インドにおける電動二輪車の現状
インドの二輪車市場の中で、電動二輪車のシェアはわずか6%程度にとどまるものの、その成長スピードは目覚ましい。21年の登録台数14万台から、24年は115万台と、3年で8倍以上の伸びを見せている。
電動二輪車の普及を後押ししているのは、政府の補助金政策やガソリン価格の高騰などの経済要因だ。原油価格の上昇によりガソリン代が上がる中で、電動二輪車は経済的な選択肢として注目を集めている。また、政府が購入補助金を提供することで初期費用が抑えられ、消費者にとって手の届きやすい価格帯になりつつある。
さらに、商用利用の動きも広がってきている。例えば、主要フードデリバリー企業であるZomato(ゾマト)やSwiggy(スウィギー)が、コスト効率化や環境負荷の軽減を目的として、電動二輪車を積極的に採用している。
今後も技術革新やインフラ整備が進むことで、市場のさらなる拡大が期待される。