昨年インテルを退任したゲルシンガー氏の言葉からは、その悔しさが滲みでている。「Today is, of course, bittersweet as this company has been my life for the bulk of my working career.(この会社は私の仕事人生の大部分を支えてきたので、今日という日はほろ苦い気持ちだ)」(インテルプレスリリース)。
その才能を見込まれ、ゲルシンガー氏は高校卒業後にインテルに入社し、初めての最高技術責任者(CTO)に就任した。その後、インテルを離れたが、微細化技術で台湾積体電路製造有限公司(TSMC)やサムスンに後れをとり、苦境にあった状況を救うべく、2021年、請われてインテルに復帰した。
「5N4Y」という計画で、4年間で5つのノード(半導体の大きさを示す指標)の微細化を進めるという目標を掲げ、今年は最終形である18A(1.8nm)を出荷する段階まで持ってきた。
一方、足枷となったのが「IDM2.0」(Integrated Device Manufacturer=統合型デバイス製造)だ。この計画でファウンドリー(受託製造)の世界トップであるTSMCに対抗すべく、同事業の強化に乗り出したが、赤字が続いた。特に、同事業の昨年7~9月の第3四半期決算では売上高43億5200万ドルに対し、営業損益58億4400万ドルの赤字となった。さらに、24年は第3四半期までに111億4800万ドル(約1.7兆円)の赤字が積み上がった。
投資もかさんだ。例えば、微細化に欠かせない露光装置で世界最先端のオランダ・ASML(ASML Holding N.V.)からHNA(高開口数)0.55のEUV(極端紫外線)装置を導入した。この装置は1台400億円以上と非常に高価。ただし、微細化技術で世界最先端を行くには必要な投資だった。
だが、株主が納得しなかった。製造ラインを整備することも大事だが、短期的成果を求める株主にとっては分かりやすく、売れる商品を製造してほしいという思いが強かったのだろう。そんなインテルの株主の心に火をつけたのが、米エヌビディアだ。