2025年3月17日(月)

World Energy Watch

2025年2月14日

 2年前、ドイツ政府は国民の3分の2が原発の継続利用を望む中で、最後の3基の原発を停止した。

 原発維持と廃止の間で揺れ動いたドイツは、2011年の福島第一原発事故後脱原発に踏み切り、当時稼働していた17基の原発を徐々に廃止することを決め、最後まで稼働していた3基を23年4月15日に停止した。

ドイツ総選挙では、電力供給が争点の一つとなっている(AP/アフロ)

 世論調査会社YouGovの当時の調査によると、33%が原発の無期限利用、32%が期間限定での利用を望み、脱原発支持は26%に留まった。

 その後、ドイツでは原発回帰、あるいは新型炉開発を訴える政党が支持を伸ばしている。欧州で多くの国が原発の新増設を検討する中、唯一脱原発を実行に移したドイツも原発に回帰することになりそうだ。

 ドイツでは昨年11月に社会民主党(SDP)、緑の党、自由民主党(FDP)の連立政権が瓦解した。その結果2月23日に総選挙を迎える。

 Politico(2月4日時点)によると、現政権のSPD、緑の党の支持率を合わせても30%しかなく、支持率1位のキリスト教民主同盟/社会同盟(CDU/CSU)が政権を握るとみられているが、CDU/CSU、次いで支持を集めているドイツのための選択肢(AfD)、FDPの3党は、選挙キャンペーンの中で、原発の再活用あるいは小型モジュール炉(SMR)の開発、新設を訴えている。

 その背景には高騰した電気料金、増加が予想される電力需要、安定供給の課題がある。

脱原発はしたものの高騰する電気料金

 2年前に国民の3分の2が脱原発に反対した背景は、ウクライナ侵攻に対する制裁としてロシア産化石燃料の輸入を削減する中で上昇した電気料金だった。ロシア産化石燃料に依存していた欧州連合(EU)諸国がロシアに対する制裁を実行した結果、需給バランスが崩れ、エネルギー価格、電気料金が大きく上昇した。

 特に、ロシアとの間に天然ガスの海底パイプラインを施設するなどロシア産化石燃料に大きく依存していたドイツでは、家庭用電気料金がロシア侵攻前の21年の1キロワット時(kWh)当たり32.16ユーロセントから23年に45.73ユーロセントに42%上昇した。日本円にすると70円に近く、日本の電気料金の2倍の水準だ。

 24年上期時点でもドイツの家庭用電気料金は、EU内でもっとも高いレベルだ(図-1)。主要国では世界一電気料金が高い国のひとつと言ってよいだろう。

 22年にドイツ政府は再生可能エネルギー(再エネ)の固定価格買取制度の電気料金による負担を税による負担に変更している。仮に電気料金による負担が継続していれば、電気料金は50セント(80円)を超えた。

 電気料金が大きく上昇する中で連立政権を構成する緑の党の経済気候保護相と環境相は、22年末に予定されていた3基の閉鎖期限を冬季の高需要期乗り切りのため4カ月延長させたが、それ以上の延長を行わず23年4月15日に閉鎖した。


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