5月に寄稿した論稿「【中国は石炭消費を減少させない】IEAの2023年石炭ピーク見通しが実現しない理由、日本は動じず石炭火力の低・脱炭素化を」で、筆者は中国の石炭消費が昨年、2023年にピークをつけて今後減少していくとする国際エネルギー機関(IEA)の見通しは起こり得ないと結論付けた。中国では石炭火力が依然として安定的な電力供給に重要な役割を果たしており、中国政府も2010年代後半に進めた性急な脱石炭政策を見直していることもあり、石炭消費は当面減少しないと見るためだ。
中国に限らず、多くの途上国では低廉で安定供給可能なエネルギーが経済発展に必要であり、再エネの主力電源化は支持を得ることができず、むしろ石炭火力の低・脱炭素化こそが、今後のイノベーション次第では、現実的な気候変動対策であるとの見方を示した。
果せる哉、7月15日に中国の国家発展改革委員会と国家能源(エネルギー)局は「石炭火力の低炭素化の改造建設行動プラン(2024-2027年)」(以下、行動プラン)を公表。石炭火力にバイオマス・グリーンアンモニアの混焼、あるいは排出された二酸化炭素(CO2)を集めて地中深くに貯めるCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)の導入を進める政策を打ち出した。
具体的な目標として、①25年までに導入対象となったプラントについては全て着工し、23年比で同規模のCO2排出原単位を20%程度改善すること、②27年までに同様にCO2排出原単位を50%程度改善し、ガス火力並みの排出原単位とすることを掲げている。当面はバイオマス、アンモニアともに10%以上の混焼率を想定しており、必要に応じてCCSも導入を進めるというものだ。
行動プランと関連情報を分析すると、中国は30年までに技術的にも経済性の面でも火力の低炭素化にある程度目途を立てて、30年前後に本格導入を開始する目算だと考えられる。この見方が正しければ、30年以降、次第に石炭消費量は減少に向かうシナリオが想定される。
その意味では、中国は今回の行動プランによって火力の低炭素化に着手し、習近平国家主席自ら表明した30年のCO2ピークアウト目標を達成するための具体的手段を手中にすることになる。そして恐らく、その後は経済性や安定性を確保しながら、対象発電所を広げつつ、混焼率を徐々に引き上げて脱石炭化を進めていく目算だろう。実に現実的な戦略である。
本稿はアンモニア混焼に絞って、中国の取り組みとその意味、今後の展望について考察する。