再エネ甘やかしで思考停止する日本
翻ってわが国はと言えば、系統安定費用がかかることを無視して再エネは安価だと強弁しつつ、そのくせ固定価格買い取り制度(FIT)や市場価格で売り買いに補助金を出すフィード・イン・プレミアム(FIP)のような割高な価格での導入を進めるなど、業界団体や政治家が横車を押すことがまかり通ってきた。
再エネはお天気任せで自ら出力制御できないため、電力需要の閑散期で供給超過になっている時間帯でも発電し続ける。本来であれば中国のように蓄電池の配備を義務付けるなど、自ら招いた余剰発電量は再エネ事業者自らが対策すべきであるが、わが国は再エネ事業者に余剰対策を義務づけていない。
にもかかわらず再エネに出力制限がかかれば、一部メディアは「再エネ電気を捨てて、もったいない」と一面的な報道を繰り返し、大手電力会社への声高な批判が巻き起こる。中国の再エネ事業者と比べると、我が国の再エネ事業者は甘やかされ過ぎだ。
わが国のアンモニア混焼に関して記事検索してみると、圧倒的にネガティブな論調の記事が多い。現状コスト面で問題があるのは否定しないが、他に「石炭火力の延命につながる」などといった主張が多いのは極めてアンフェアだ。
アンモニア混焼の展開をリードしているJERAが表明しているように、アンモニアの燃焼によるCO2排出はゼロである以上、混焼率を高めていくことでCO2の排出削減が進むことは確実である。JERAの目標としている専焼にまで至らなくても、混焼率がかなり高くなった後に残りはCCSで回収することでゼロエミッションを実現することも可能である。
確かに現状で排出ゼロを達成するために必要なコストは、現実的に導入可能な水準とは到底言えない。すべては今後のイノベーション次第で、火力の低・脱炭素化のコストをどこまで下げられるのかにかかっている。しかしそれは再エネにとっても同様である。
気候条件次第で出力が大きく変動する再エネでは供給安定性が保てないという事実はさすがに隠せなくなってきたが、それは蓄電池の導入でカバーできるとさらりと流される場合が多い。しかしその蓄電池のコストは現状非常に割高で、わが国には中国のように再エネ事業者が一部でも蓄電コストを負担する仕組みすらない。大手電力会社の火力発電による出力調整にフリーライドしているのが現実である。
再エネ主力電源化と言うのであれば、火力ではなく蓄電池で再エネの出力変動をカバーするべきである。それが実現できるかどうかは今後の蓄電池価格を下げるイノベーション次第ということになろう。
すなわちアンモニア混焼も再エネも将来のイノベーションを待つべきという点で同じであり、アンモニア混焼にだけ現在の欠点をあげつらうのはアンフェアである。
火力の低・脱炭素化でも中国は競争力を持つか?
とは言え、アンモニア混焼のコストは現状でかなり割高で、自ら出力調整が可能な火力であるから安定供給には資するといえど、経済性の面から現実的な選択肢と言えないのではないか、と考える向きも多いだろう。実際、炭素価格を考慮しなければ、通常の石炭火力と比較すると発電コストは2倍以上である。
中国の行動プランには、こうした中国政府の計画に通常示される導入量に関する具体的な数値目標が見当たらない。アンモニア混焼による低・脱炭素化は現状のコストでは大々的に進めることは想定できないが、さりとて習近平国家主席が国際的に公約した30年のCO2ピークアウト目標を実現する道筋を示さないわけにもいかないという事情が暗示されているのかもしれない。