米国防総省の委託を受けたシンクタンクが南シナ海の中国軍事施設をドル価格で数値化した資料を作成、これをワシントン・ポスト紙が共有し、同紙国家安全保障レポーターのEllen Nakashimaらが、米軍基地と比較しながら中国の軍事施設近代化が如何に急速に進んでいるかを解説している。要旨は次の通り。
海南島は過去10年間で、中国の近代的軍事力が最も集中的に強化されてきた地域で、南シナ海の紛争海域への攻撃的な進出の出発地点となってきた。
米国防総省の委託を受け、約200の軍事施設を独占的に分析してきた防衛コンサルタント長期戦略グループ(LTSG)によると、
① 人民解放軍(PLA)は20年以上をかけて、海南島や南シナ海の埋め立てられた岩礁にある軍事インフラの価値を3倍以上に増やした。
② これら軍事インフラの価値は2022年時点で500億ドル超。ハワイにあるすべての米軍施設の価値を上回る。
③ 海南島の楡林海軍基地のインフラは、22年に180億ドル以上の価値。太平洋で最も重要な米軍施設の一つパールハーバー・ヒッカム統合基地の価値に匹敵。
④ 現在の傾向が続けば、直接対決の可能性がある紛争において、長らく米軍の優位性と考えられてきたものが無効化される可能性がある。
米軍の高官らは、習近平は米軍が向かうことになるような攻撃を仕掛ける準備ができているとは考えていない。しかしその日は遅かれ早かれ来るだろう。
専門家は「中国は航空機、ミサイル、民兵、船舶、潜水艦など、複数の手段で戦力を投射する能力を構築した。……中国の攻撃を未然に防ぐために、米国は同盟国とともに能力と軍事態勢を強化する必要がある」と語っている。
海南島楡林の海軍基地は、南シナ海における中国海軍のプレゼンスの中心地であり、2つの深海湾にまたがり、合計約25億ドルの価値となる空母乾ドックと空母桟橋を備えている。
専門家によれば、PLAの長年の目標は、日本海から南シナ海までの全域にわたる「突破力」のある戦力投射能力の獲得である。第一列島線で区切られた地域の大半を効果的に支配することが、より広く勢力を拡大するための戦略シナリオの第一歩となる。
第二列島線沿いには主要な米軍基地がある。中国の軍事拠点は、米国とその同盟国が北京が主張する勢力圏に入るのを制約するように設計されている。