2024年9月12日付Economist誌は、南シナ海の紛争が新たなステージを迎えつつあるとする社説を掲載している。
8年前中国は南シナ海に関する国際仲裁判決に破れたが、中国はその後も珊瑚礁や岩礁を占拠し他国を締め出している。ベトナム、フィリピン、マレーシアはそれぞれのやり方で中国に対抗しているが、対立は次第に熱を帯びてきている。米国としては同盟国フィリピンが注意深く動くよう対応しなければならない。
最近の展開は急激であり、6月17日にはセカンドトーマス礁でフィリピン人が中国海警により負傷する事件が起こった。2週間前には別の岩礁にてフィリピン沿岸警備艇が中国船に衝突されている。中国が放水銃で嫌がらせする映像が拡散され、米中の外交協議にも取り上げられる中で、事態がコントロールできないほど悪化するのではないかと懸念されている。
東南アジア諸国は長年様々な形で中国の動きに対抗してきた。ベトナムは中国と同じようにスプラトリー諸島に自国の拠点を構築しているが、マレーシアは傍観している。フィリピンは最も強い対応をとっており、マルコス大統領は中国と距離をとり、国内軍事拠点へのアクセスを米国に認め、海洋権益を擁護する強い姿勢をとっている。
あまりに対立が激化すれば、米国が相互防衛協定のもとでフィリピンを防衛しなければならなくなる危険性がある。マルコス大統領は5月に、もしフィリピン市民が衝突の中で死亡すれば、それは「戦争行為」に近いし、米国も「同様の基準を持つもの」と予想すると述べた。
一方オースティン米国防長官は、この発言を支持することは避けた。米国としては、大規模な戦争は避けたいものの、もし重要な同盟国を支援することができなければ、米国の抑止力は大きく傷つき、中国の南シナ海における違法な主張がさらに強固なものとなってしまう。
まずは米国が同盟国、特にフィリピンとの協調を強めることであろう。条約上米国はフィリピン公船が武力攻撃を受けた場合には、共通の危険に対処することとなっている。しかしこのことはフィリピンが条約を拡大解釈することを意味しない。