2024年10月11日(金)

21世紀の安全保障論

2024年10月1日

 「海自艦 台湾海峡を初通過 中国威圧強化に対抗」――。読売新聞が9月26日の朝刊で特報した事実に対し、中国は護衛艦の行動を監視していたとした上で、「台湾問題は中国の主権と領土保全に関わる」として、日本政府に厳正に抗議したことを明らかにした。

石破茂新首相は冷え込んだ日中関係にどう対処していくのか(代表撮影/ロイター/アフロ)

 岸田文雄首相が退任を表明して以降、中国は日本の政権移行期を標的にしたように軍事行動を活発化させている。8月26日に中国軍機が初めて長崎県沖の日本領空を侵犯したのに続き、31日には中国海軍の測量艦が鹿児島県周辺の領海に侵入、9月18日にも空母「遼寧」を含む3隻の軍艦が沖縄県周辺の接続水域を航行した。

 23日にロシア軍機が北海道の領空を侵犯したのも、中露による共同軍事演習の1場面だった。さらに25日には、中国の人民解放軍が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を太平洋上の公海に発射させている。

 中国の相次ぐ軍事的な威圧行動に対し、法の支配に基づき、毅然とした対応として取った行動が、今回の海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」による台湾海峡の初通過だった。だが問題はこれからだ。新首相に就く石破茂自民党総裁には、中国との長く続く冷戦をどう戦い続けるか、その覚悟と知恵が求められている。

周辺国の嫌がることはしてこなかった

 敗戦後の日本は周辺国を安心させるために、「専守防衛」という受動的な戦略を採用し、政府は中国や韓国など周辺国が嫌がるような行動は採らない方針を続けてきた。長い間、沖縄・南西諸島に自衛隊基地を置かなかったのも、航空自衛隊の主力戦闘機F-15の沖縄配備が全国で最も遅かったのも、そうした方針があったからだ。そして自衛隊創設以来、海自の護衛艦が台湾海峡を航行してこなかったのも、同じ理由からだった。

 だが、日本の“配慮”も空しく、経済力と増強に転じた軍事力を背景に、まず中国は2006年版の国防白書『中国の国防』の中で、①海洋権益の保全、②領海における主権の保全――を打ち出し、海軍の駆逐艦など4隻が08年10月、対馬海峡から日本海を経て津軽海峡を通過したほか、同年12月には政府公船2隻が沖縄・尖閣諸島の領海に侵入、9時間半にわたって周回するという挑発行為を強行した。

 以後続く傍若無人な振る舞いは周知の通りだが、同諸島にとどまらず中国の威圧的な海洋進出は拡大し、今では鹿児島県の大隅海峡やトカラ海峡を「国際海峡だ」と主張、国際法を無視し、海軍の調査船や測量艦などが何度も領海内を航行する事態となっている。


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