米兵による沖縄県内での性犯罪事件を巡って、政府が県に情報を連絡していなかったことについて、政府は情報の伝達、共有の在り方を見直すという。当然だろう。だが残念ながら、現状では政府の対応を期待することはできない。
なぜなら、「なぜ見直すのか」という目的を、はっきりと示していないからだ。「この度はすみませんでした」といった程度の話ではない。安全保障、特に米軍に関する沖縄との情報伝達や共有は、他の都道府県との情報連絡とは全く意味が違う。
現下の安全保障環境を踏まえれば、政府は一刻も早く沖縄との信頼関係を修復しなければならないことは自明のはずだ。そうした危機意識を持って沖縄との関係改善に取り組み、米国に対しても犯罪の再発防止を強く求めなければ、岸田文雄政権が存続する意味などない。
一連の情報をたどってみると……
今回、在沖米兵による性犯罪が発覚した経緯は、沖縄の民放局が6月25日、「那覇地検が不同意性交などの罪で米兵を起訴していた」と報じたことが発端で、放送後に沖縄県が政府に事実関係を問い合わせ、外務省が事件の内容や起訴した事実を、県には一切伝えていなかったことが明らかになった。しかも、米兵の起訴は3月27日で、政府は同日、外務次官を通じて、ラーム・エマニュエル駐日米大使に綱紀粛正と再発防止を申し入れている。そこまでしていながら、県に事実関係を伝えなかったことは到底理解できない。
事件発覚後の6月28日、那覇地検はまるで隠蔽体質を疑われては困るかのように、5月に発生した別の事件で、別の在沖米兵を不同意性交致傷の罪で6月17日に起訴していたことを発表した。昨年以降に摘発した米軍人と軍属の性犯罪は合わせて5件で、同地検と沖縄県警は、性犯罪の特性から被害者のプライバシー保護を最優先に考慮し、沖縄県と県の公安委員会に情報を伝えなかったと説明している。
こうした経緯をみれば、3月27日に起訴し、3カ月近くも隠し通してきた事件対応の異様さが際立っているように思える。事件は昨年12月24日に発生、米空軍兵士(25歳)が、公園にいた16歳未満の少女に声を掛けて連れ去り、下半身を触るなどの暴行をしたという卑劣な犯罪だった。