サンフランシスコ近郊で11月15日に開催された米中首脳会談では、両国間の軍事対話の再開で合意した一方、台湾問題では平行線で進展は見られなかった。このため、中国の台湾侵攻に対する米国の警戒感に変化はない。
この警戒感を如実に示すのは、米中首脳会談と同じ11月15日、沖縄本島に駐留する「第12海兵連隊(12th Marine Regiment)」が「第12海兵沿岸連隊(12th Marine Littoral Regiment)」に改編されたことだ。この改編には、かつて沖縄の地で日本陸軍と戦った米海兵隊が、今後は沖縄の地で陸上自衛隊と協力し、中国軍の攻撃を排除する意志が込められている。ここでは、この改編が在沖縄米海兵隊に突き付ける「沖縄との関係に関わる課題」並びにこの課題に関わる陸上自衛隊の役割を考えてみたい。
海兵沿岸連隊とは
海兵沿岸連隊は、米海兵隊の将来構想「Force Design 2030」(2020年3月公表)で登場した新しいタイプの戦闘部隊であり、その背景には、中国軍の海・空・ミサイル戦力の増強が米軍の優位を脅かしていることがある。特に、台湾を巡る米中間の有事では、中国本土に近い東シナ海、南シナ海、西太平洋などで活動する米軍は、中国軍の激しい攻撃に晒されて大きな損害を被る。
こうした米軍にとって不利な状況を打開するため、海兵沿岸連隊は情勢緊迫時や有事の際に南西諸島からフィリピンに至る第一列島線に展開し、中国軍の東シナ海、南シナ海、西太平洋での活動を妨害して米軍の作戦を支援する。つまり、海兵沿岸連隊は米軍が中国に近い海域・地域で主導権を取り戻すための尖兵なのだ。
なお、海兵沿岸連隊は3個連隊が太平洋地域に配置される予定であり、最初の連隊は2022年にハワイに、2個目の連隊は今年沖縄に配置され、3個目の連隊は27年までにグアムに配置される予定である。
海兵連隊との違い
戦い方に関して、海兵連隊は敵が占拠する地域に着上陸し、主として歩兵戦力および火力を用いた地上戦闘によって地域を奪取するという戦い方を得意とする。一方、海兵沿岸連隊は、敵兵がいない島嶼などへ迅速に展開し、情報収集、敵の水上艦艇や航空機への攻撃、戦闘機などへの燃料・弾薬再補給で周辺海・空域での敵の活動を妨害する。
このように、海兵沿岸連隊の戦い方は防御的であり、「殴り込み部隊」と称される攻撃的な海兵連隊のそれとは異質である。また、海兵連隊は基本的に、米軍が海上・航空優勢を確保する圏内で作戦するのに対し、海兵沿岸連隊は敵が海上・航空優勢を保持する中で攻撃に耐えながら米軍が主導権を取り戻すまで戦う。