2025年4月15日(火)

経済の常識 VS 政策の非常識

2025年4月8日

 多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包摂性(Inclusion)を意味する(DEI)という言葉が、世界中の会社で流行っていた。多様な人材を取り込み、一人ひとりの能力を最大限発揮することによって、優秀な人材を確保し、従業員の満足度を向上させ、新しいビジネスチャンスを発見し、企業の競争力の向上が得られるとされてきた。日本の企業も、DEIを推進するために、研修を行い、人事における性、人種などの不公平の解消などに努力してきた。

(Love Employee/gettyimages)

 ところが、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、DEIを終了させようとしている。連邦政府でDEIを強制する政策、優遇措置、活動など、全ての「差別的」プログラムを廃止させている。DEIは、強要された違法かつ不道徳な差別だとし、連邦職員の業績評価や雇用慣行は個人の技能、業績、勤勉度によって行われるべきで、DEIに関わる目標、方針、要件を考慮してはならないとした。

 また、公民権法が「人種、肌の色、宗教、性別、または国籍に基づく差別から個々の米国人を保護」しており、「この公民権保護は全ての米国人の機会を平等に支える規範として機能している」とし、「大統領としてこの法律が確実に施行されるようにする確固たる義務がある」と述べた。

 連邦政府全ての省庁に対し、DEIの廃止を指示するとともに、民間企業のDEIの廃止も働きかけている(以上は、「トランプ米大統領、連邦政府の多様性、公平性、包摂性(DEI)を終了する大統領令に署名」JETROビジネス短信2025年01月28日などによる)。

 事情を知らない日本人の感覚では、公民権法とDEIは同じ方向を目指しているものだと思うが、トランプ大統領とそれを支持する共和党支持者の感覚とは異なる。公民権法は、特に人種差別を撤廃する法律だが、あえて多様性や公平性や包摂性を強調するのは逆差別になるというのだ。


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