2025年12月6日(土)

経済の常識 VS 政策の非常識

2025年4月8日

 逆差別になるという主張を力づけたのは、大学の入学者選抜で人種を考慮する「アファーマティブ・アクション」を巡る訴訟で、連邦最高裁が、23年6月29日、人種を考慮することは、「法の下の平等」を定めた憲法修正14条、人種、肌の色、国籍による差別を禁じた公民権法第6条に違反して違憲だと判決を下したことだ。すると、マイノリティの雇用比率などを目標とするのは逆差別になることにもなりうる。

DEIから脱退するアメリカ企業

 トランプ大統領の反DEIの動きを受けて、アメリカの投資銀行ゴールドマン・サックスは、企業が新規株式公開(IPO)を行う際に取締役会の多様性要件を満たすことを求める方針を撤廃した。同社はアメリカおよびヨーロッパの企業に対し、取締役会に2人の多様性のあるメンバーを求め、そのうち1人は女性であることを義務付けていた。しかし、最近の法的動向を受け、この要件を廃止した(以下、「Goldman Sachs、取締役会の多様性要件を撤廃—企業のDEI方針見直しが加速」日本経済新聞2025年2月12日などによる)。

 他にも、大手コンサルティング会社デロイト、アクセンチュアも、これまで掲げていたDEIの目標を撤回した。特定の人種や性別を対象とした昇進支援プログラムの見直しが行われ、従業員の業績評価におけるDEI目標も中止される。さらに、DEI関連の外部調査への参加や提携先の見直しも進めるという。

 大手ハイテク企業では、メタ(フェイスブック)、グーグル、アマゾンがDEIの取り組みを縮小しているという(「米グーグルもDEI見直し宣言、トランプ大統領令準拠が理由」トムソン・ロイター2025年2月5日)。マクドナルドやウォルマートもこの流れに参加している。

ウォルト・ディズニーもDEIの方針を転換しようとしている(vesilvio/gettyimages)

 また、ウォルト・ディズニーは、管理職の報酬を決める基準から多様性を外し、今後は企業価値をどれだけ高めているのか、異なる視点をどのぐらい取り入れているかという点を考慮する方針だという(「ディズニーもDEI見直し、管理職の報酬決定基準から多様性除外」Bloomberg2025年2月12日)。ディズニーの、DEIという立派なことをしたら給料を上げてやるという方針も露骨に思ったが、これを逆転するのもまた露骨だ。

 一方で、コストコやJPモルガン・チェース、デルタ航空などは、反DEIの動きに参加していないという。

 なお他にも、世界的に多くの企業が脱炭素の国際枠組みから脱退している。日本企業でも、三井住友フィナンシャルグループ、野村ホールディングス、農林中金などが脱退した(「脱炭素目指す国際枠組み 農林中金も脱退」日本経済新聞2025年3月26日)。まあ、山の木を伐って太陽光パネルを並べて洪水を起こすような脱炭素は止めた方が良い。


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