2025年1月10日(金)

プーチンのロシア

2025年1月10日

 2024年のロシア経済を振り返りつつ、2025年の展望を考えてみよう。最初に、ロシア国営のRIAノーヴォスチ通信が12月24日に、「2024年のロシア経済10大ニュース」というものを発表したので、それを紹介したい。

(Max Zolotukhin/gettyimages)

 ノーヴォスチ通信はプーチン体制のプロパガンダ機関なので、批判的論調は期待できない。それでも、日本ではほとんど話題にならなかった事柄が含まれている点は、興味深い。24年のロシア経済を振り返り、またプーチン政権の経済観を知る上では、有益であろう。

 以下に10大ニュースとそれぞれについての解説文を示すが、解説文はノーヴォスチ通信のテキストをベースとしつつ、筆者が適宜補足をして構成した。なお、記事には明記されていないが、番号は必ずしも重要度の順位を意味しないようである。

1.経済の過熱

 ロシアに対する制裁がますます強化されているにもかかわらず、24年にロシア経済は4%に迫る成長を遂げた。それのみならず、当局が経済の「加熱」を表明するまでになっている。

 ナビウリナ中銀総裁によれば、今のロシア経済の過熱状態は、リーマンショック直前の08年以来のものであるという。頭痛の種となったのがインフレで、それに対処するために中銀は10月、政策金利を過去最高の21%にまで引き上げた。

2.税制改正

 ロシアは24年に税制改正を決定し、25年初めから施行することになった。企業に対する利潤税は、20%から25%へと引き上げられた。また、個人所得税では図1に見るように累進課税が強化された。

3.ルーブル・レートと為替管理

 23年10月にルーブル安が進み、1ドル=100ルーブルの大台を割り込んだことを受け、ロシア政府は輸出業者に外貨収入を売却することを義務付けることを含む為替管理措置を導入した。これにより為替が安定に向かったことから、財務省はこれらの措置を少なくとも24年一杯まで継続したい意向であった。

 しかし、通貨規制は実業界にとって有害であり、また為替レートは貿易収支や財政収支といった要因にも左右されるとして、中銀がこれに反対。結局、24年7月に、強制売却制度は維持するが、売却比率を60%から40%に引き下げるという折衷案が決まった。

 11月になり、再びルーブル安が進み、為替は再び1ドル=100ルーブルを突破したが、財務省も中銀も、為替管理の強化は必要ないとの立場をとっている。

4.優遇住宅ローンのプログラムを縮小

 高金利が続くロシアであるが、政府はコロナ危機に対する社会・経済対策として「優遇ローン」というプログラムを導入し、国民は年利8%の固定金利で住宅ローンを借りることができた。これが新築住宅のバブルをもたらし、金融市場の安定性を損なうものとして、中銀が問題視していた。結局、「優遇ローン」は24年6月をもって打ち切られた。

 ただし、幼い子供のいる家庭は引き続き、年利6%の「家族ローン」を利用できる。IT技術者も、5%からは引き上げられたものの、年利6%で住宅ローンを借りられる。極東および極北住民に至ってはこれまでどおり、年利2%で住宅ローンを借りられる。


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