フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのギデオン・ラックマンが、3月10日付けの論説‘Trump is making Europe great again’で、トランプ大統領の登場により、欧州の安全保障環境が劇的に変動したことに伴い、軍事面で米国に大きく依存する現状を是正すべく、欧州では欧州の防衛能力の強化に真剣な努力が進行し始めたことを論じている。要旨は次の通り。

トランプは欧州統合に偉大な貢献をしている。ロシアにおもねり、北大西洋条約機構(NATO)に対する信頼を傷つけ、欧州連合(EU)を関税で脅し、欧州の極右の後押しをした。これらすべてがEUに衝撃的な効果を持った。今や、何年もの間停滞していた、より大きな欧州統合に向けての根本的なステップが進行中である。
注目すべき3つの鍵となる分野がある。第一に、欧州の防衛、第二に、欧州の共通債券、第三に、英国とEUの間の不和の修復である。
多くの欧州の指導者は、トランプの米国が脅威であることに同意しているが、外交的理由によりそれを声高に言う者はほとんどいない。今や80年を超える大西洋同盟の故に、米国の軍事的支援に大きく依存するに至ったことに彼らは気付いて、居心地悪く感じている。
単におカネの問題ではない。本当に危険なのは米国のテクノロジーと兵器への依存である。
今や欧州はツートラックの政策を追及している。欧州に対する米国の軍事支援の切断の時に出来るだけ早く備えをすることをしつつ、他方で、その時を出来るだけ長く遅らせる必要がある。
欧州委員会に1500億ユーロを調達しEUの防衛産業への支出に当てることを認める最近の決定のロジックはそこにある。新たな支出は欧州諸国が米国に特に頼っている分野、例えば防空に集中することになろう。
欧州の共通債券の発行は、単に防衛のためにおカネを調達する手段という訳ではない。それは、ドルに代わる準備通貨としてのユーロを推進するチャンスを提供する。トランプ政権の気紛れさは、米国国債に代わる安全な資産に対して、相当な世界的な需要があることを意味する。
欧州に対するトランプの最後の「親切」は、Brexit後におけるEUと英国の和解を早めることである。スターマーとマクロンはウクライナについて緊密に協力している。メルツを含め強力な3人組を構成し得よう。
軍事支出を増強する一つの仕組みは新たな欧州の防衛基金であろう。この基金に英国も参加し得る。