2025年4月1日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年3月26日

 残りの1500億ユーロは、「新た仕組み」により加盟国の防衛目的の投資のために融資(贈与ではない)として提供する。彼女は「新たな仕組み」としか述べなかったが、欧州委員会が市場で共通債券を発行して調達する構想と一般に受け止められている。この資金は、欧州に共通して能力に問題がある分野(防空・ミサイル防衛など)に向けられるようである。

 その他、結束基金(EU予算による支援プログラム)の資金を加盟国が防衛関連のプロジェクトに使用し易いようにするための提案を行う予定であること、また欧州投資銀行を活用することにも言及がある。

EUはショックを克服しなければならない

 以上の提案は3月6日の臨時のEU首脳会議で大筋政治的支持を得たようであるが、詳細はこれからの議論待ちである。1500億ユーロを調達するためにEUの共通債券を発行することにドイツの財務相は否定的な発言をしたようであるが、メルツ政権発足後に支持に転換するのかは決定的に重要である。フランスのマクロンは共通債券が是非とも必要との立場である。

 また、1500億ユーロの使い方であるが、EU首脳会議でマクロンはEUの自律性の強化と国内産業の振興の立場から、この資金による調達はEU域内企業に限られるべきことを主張した。これに対し、ショルツは英国、ノルウェー、スイス、トルコのような域外国との協力の必要性を主張したとされている。その背景にはドイツの兵器企業には域外国の企業との協力関係があるという事情もあるようである。

 欧州統合は地政学的なショックを捉えて克服し、前進して来た。EUは今回もショックを克服せねばならない。そして、EUを毛嫌いしているらしいトランプ政権を見返してやる必要がある。

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