2024年11月21日(木)

人口減少社会とスポーツと子どもと

2024年5月4日

 米大リーグで日本人初の本塁打王に輝いた大谷翔平選手は、新天地のドジャースでもさらなる活躍を見せている。そんな大谷選手のスイングの軌道は、少年時代に「バットがボールに対して上から叩け」と教わった世代には違和感が生じているのではないだろうか。

大谷翔平選手はじめ一流選手のスイングが子どもたちの野球にも変化を与えている(USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 少し前なら「アッパースイング」とダメ出しの対象にすらなっていただろう。しかし、実際には大谷選手だけでなく、ヤンキースで2022年にア・リーグ最多記録を更新する62本塁打を放ったアーロン・ジャッジ選手や、大谷選手のエンゼルス時代の同僚であるマイク・トラウト選手らも同じようなスイングで柵越えを連発する。

 近年のメジャーではデータ解析が進化する。その中の一つに打球速度と角度による「バレルゾーン」と呼ばれる領域があり、打球速度が時速158キロで打球角度が26~30度だと安打率や長打率が高くなるとされる。こうした背景もあり、日本の野球少年たちのスイングにも変化が見てとれるが、長く現場を預かる指導者とは打撃フォームを巡って軋轢が生じるケースもあるという。

本塁打王を生んだ道場

 神奈川県横浜市の田園地帯の一角に「根鈴道場」はある。現役時代にメジャー経験こそないものの、マイナー3Aをはじめ、国内外の独立リーグでもプレーした根鈴雄次氏が主宰する打撃に特化した野球塾だ。

根鈴道場で打撃指導を行う根鈴雄次さん(筆者撮影、以下同)

 打撃マシンやティー打撃を行うためのスタンドが置かれる施設には、いくつか形状が独特なバットも並ぶ。根鈴氏が考案した練習用のバットで、近年はプロ野球選手も愛用している。実はこのバットこそ、大谷選手のような打撃フォームを意識するためのものだという。

 根鈴氏が提唱する打撃は、ボールに対してバットの「面」を立てて捉えるというものだ。バットをゴルフのスイングのように縦回転で振り下ろし、地面に対して20~30度の角度までふり上がったところでボールに当たると、ボールはバレルゾーンの範囲で飛ぶという理屈である。オリックスの杉本裕太郎選手が根鈴道場に通った後、本塁打王を獲得するなど打撃を開花させたことで、一気に注目が集まった。


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