2025年4月13日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年4月7日

 ウォールストリート・ジャーナル紙の3月20日付け解説記事が、ゼレンスキー・トランプ電話会談で話題となったウクライナのザポリージャ原発について、トランプが所有・管理を念頭においているのに対しゼレンスキーは同原発のロシアからの奪還と安全保障を重視し両者間に相違があるが、このまま放置すればチェルノブイリ原発事故と同様の惨事を招く恐れがある、と警告している。要旨は次の通り。

冷却塔から煙が上がるザポリージャ原子力発電所(提供:Ukrainian Presidential Press Office/AP/アフロ)

 トランプ政権がウクライナに平和をもたらすために最近提案しているのは、ウクライナに対するモスクワのさらなる攻撃に対する保険として、米国がウクライナの原子力施設を含む発電所を管理するというものだ。

 トランプ大統領は問題となっている発電所の具体的な名前を挙げていないが、ゼレンスキー大統領は19日に米国大統領と会談した後、二人が話し合ったのは紛争の最初の数週間にロシアに接収され、戦争中ずっと小競り合いや砲撃の現場となってきたヨーロッパ最大の原子力発電所、ザポリージャ発電所のことだと述べた。

 同大統領は20日、米国がロシアから発電所を奪還し、投資・近代化したいのであれば、ウクライナはそれについて話し合う用意があるが、所有権の問題についてはトランプ大統領との間で絶対に話し合わなかったとしている。米国が同発電所を制圧しようとするなら、戦闘を鎮圧し、プーチン大統領から同発電所を奪い取らなければならないということだ。

 ウクライナ原子力庁によると、ウクライナは国内4カ所の発電所で15基の原子炉を稼働させているが、ザポリージャはほぼ機能していない。同発電所の6基の原子炉は現在、いわゆる冷温停止状態でオフラインになっている。

 この地域で戦闘が続く限り、同原発の再稼働に伴うリスクが民間企業を遠ざけることになるだろう。ゼレンスキー氏は19日、原発の再稼働には少なくとも2年かかるとの見通しを述べた。

 ウクライナは、史上最大の原子力災害となった1986年のチェルノブイリ原発メルトダウンの現場であるが、今やザポリージャ原発周辺の戦闘により、同様の災害の恐れが高まっている。


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