2025年1月26日(日)

World Energy Watch

2024年12月20日

 最狭部がドーバー海峡として知られるイギリスとフランスを隔てるイギリス海峡は2016年11月20日に、時速140キロメートルを超える猛烈な嵐に襲われていた。嵐の最中に、英国の送電網管理を行っているナショナルグリッドは、フランスとの電力輸出入用海底送電線の能力が突然半分になったことに気がついた。

 嵐の中で錨を下ろした船が流され、英仏間に敷設された海底送電線8本の内4本を切ってしまったのだ。フランスからの電力輸入に依存することが多い英国は、冬の電力需要期に原発1基分に相当する100万キロワット(kW)のフランスからの供給力を失い慌てることになった。

海底のインフラも〝狙われる〟存在になっている(AlexLMX/gettyimages)

 海底送電線、あるいは通信用ケーブルが切断される事故は、時々起きるとされているが、海底インフラの意図的な破壊は、そうあることではなかった。しかし、この数年で状況は変わった。

 22年9月にロシアとドイツを結ぶ海底天然ガスパイプライン、ノルドストリーム1と2の合計4本のパイプラインの内3本が破壊された。当初犯人は不明とされたが、今年ドイツ検察がウクライナ人に逮捕状を出したと報じられた。

 23年10月には、フィンランドとエストニアを結ぶ海底天然ガスパイプライン、24年11月には、バルト海のスウェーデン領海で海底通信ケーブル2本が損傷を受けた。どちらも中国船による破壊工作の可能性があると報道されている。

 海底通信インフラが破壊工作の対象になるとすれば、日本も安全保障上データーセンターを自国内に設置することが必須だ。そうなると安定的電力供給が喫緊の課題として浮上する。

 12月17日発表された第7次エネルギー基本計画(素案)は安定的な電力供給を実現可能な内容だろうか。


新着記事

»もっと見る