2025年1月1日(水)

World Energy Watch

2024年12月20日

中国船の破壊活動が続く欧州

 フィンランドの首都ヘルシンキ出張時の休日に港を散策していたところ、エストニアの首都タリンに向かうフェリーがあった。航海時間は3時間というので、思わず乗船しようかと思ったが、海が荒れて帰って来られなくなると仕事に差し障るので、見送った経験がある。

 ヘルシンキとエストニア間には、ガスパイプラインと通信ケーブルが敷設されている。23年10月8日にフィンランドとエストニアを結ぶパイプラインが、ガス漏れを検知し停止した。

 調査により中国のコンテナ船、”Newnew Polar Bear”が錨を下ろしたまま航行しパイプラインを破壊したことが、現場に錨が残っていたことから判明した。パイプラインと並行している通信ケーブルも切断していた。

 フィンランドの閣僚は、全ての証拠が故意による破壊活動を示していると述べたが、中国政府は調査に協力せず、今年になり故意ではなく事故と主張した。

 同じ10月8日に、スウェーデンとエストニアを結ぶ海底ケーブル6本中、4本が破損した。破損時に通過した船舶は“Newnew Polar Bear”とロシアの原子力貨物船“Sevmorput”のみであったことから、どちらかの船により切断されたと判断された。両船は、エストニアとフィンランド間の海底ケーブ切断時にも現場を通過していた。

 切断が明らかになった後、両船は同じ航路を辿り、共に海底ケーブルとパイプラインが密集するノルウェー北部に向かったことから、ノルウェー軍が警戒についたと報道された。

 今年11月17日と18日には、ドイツとフィンランドを結ぶ海底ケーブルとリトアニアとスウェーデンのゴットランド島を結ぶ海底ケーブルが破損した(図-1)。

 同時刻に中国の貨物船“Yi Peng 3”が破損個所を通過しており、錨を下ろしたまま100マイル以上航行していたこと、また破損個所の近くで減速などの異常な行動をしたことから故意による破壊活動とされた。

 12月になり、ロシアの諜報機関の指示により“Yi Peng 3”のロシア人船長が破壊活動に従事したと報道された。

安全保障と経済成長に不可欠な電力供給

 日本も海外の多くの地域と海底ケーブルでつながっている。通常複数回線のケーブルが敷設されているので、事故による切断であれば大きな問題が起きる可能性は小さい。しかし、破壊活動は別だ。

 海底ケーブルが破壊工作の対象になる可能性があるのであれば、生成AIの利用が防衛から交通部門まで社会のさまざまな分野で広がる中で、データーセンターの海外立地はできない。

 データーセンターを国内に立地する大前提は365日、24時間絶えることのない安定的な電力供給だ。十分な電力供給は安全保障にとっても重要だが、経済成長を支えるためにも必須だ。

 AIの高度化と急速な広がりによりデーターセンター向け電力需要量は急増するとみられているが、そこへの電力供給ができなれければ、データーセンターも必要とされる半導体製造工場も国内には立地できない。


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