2025年1月1日(水)

World Energy Watch

2024年12月20日

 AIの活用では世界の先頭を走り、世界のデーターセンターの約半分が立地する米国では、大手IT企業、GAFAMが自社のデーターセンター用に電力供給を独自に確保する動きを活発化させている。

 米エクソン‐モービルなどの大手石油メジャーも、データーセンター用に電力を供給するため天然ガス火力の発電事業に乗り出した。

データーセンターと原子力発電

 AIの利用が拡大する一方、その能力も向上しているが、使用する電力量も増えている。ただし、今後の電力需要量の伸びについては、不透明な部分もある。

 ひとつはGPU(画像処理装置)の能力向上だ。さらに電気信号に代え光を利用する光電融合技術による電力消費量の削減も予想される。

 そんな予測はあるものの、データーセンターの電力需要量はやはり大きく増加するとの見方が米国では多い。

 コンサルタントのマッキンゼーの今年9月のレポートは、30年の中間ケースのデーターセンターの電力需要を約6000億キロワット時(kWh)と予想している。米国の現在の電力需要量約4兆kWhの15%だ。

 この電力需要量の増加を賄うためには、発電設備の新設が必要だ。発電設備からの距離によっては送電網の増強も必要になるが、送電網の増強には時間が掛かる。

 問題を解決する方法の一つは、マイクロソフト、アマゾン、グーグルが相次いで発表したように原子力発電所の近くにデーターセンターを立地し、最短距離の送電にすることだ。

 マイクロソフトは、閉鎖されたスリーマイル島原発1号機の再開による電力供給を20年間受ける計画だが、アマゾンなどは建設期間が短いと考えられる小型モジュール炉(SMR)をデーターセンターの隣接地に新設し、早期の電力供給を実現する計画だ。発表されている計画地は図-2の通りだ。

 マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が創業し会長を務める原子力スタートアップ企業のテラパワーは、今年6月米国50州の中で人口が最小のワイオミング州で最大出力50万kWのSMRを着工した。30年の完成時の供給先は今後建設されるデーターセンターの可能性がある。

発電事業に乗り出す石油メジャー

 米国の石油メジャーは電力需要増をビジネスチャンスと捉えている。12月11日付けニューヨークタイムズ紙は、米石油メジャー最大手エクソンモービル初の発電事業を報じた。

 エクソンモービルは、データーセンターに天然ガス火力による電力を供給すべく用地を手当てし、需要家候補と交渉を開始している。

 5年以内に発電を開始し送電網にはつながずにデーターセンター専用に電力を供給する。送電網を利用しないので、事業開始までの時間が短くなる。

 排出される二酸化炭素を捕捉し地下に貯留する装置も設置するとしているので、熱心に温暖化問題に取り組み低炭素電源からの電気を優先的に購入するGAFAMに電力を販売する可能性が高そうだ。発電規模は150万kW。建設地点は公表されていない。

 エクソンモービルに次ぐ米石油メジャーのシェブロンも送電網につながない発電事業を検討中と明らかにしている。データーセンターの建設スピードを睨んだ発電事業だ。

 欧州系石油メジャーの動きは異なる。英BPは米東海岸の洋上風力事業から撤退した。シェルも、洋上風力発電事業への新規投資を中止し、石油、ガス事業への投資に振り向けると発表した。欧米石油メジャーの方向は異なるが、より収益性の高い事業へシフトしている。


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