ニューヨーク市警察は2024年12月31日、22日に同市ブルックリンで地下鉄車両内にいたところ、火をつけられて死亡した女性の身元を公表した。
警察は、事件の被害者をニュージャージー州在住のデブリナ・カワムさん(57)だと特定したと明らかにした。カワムさんの遺体は、ただちに身元が確認できないほど損傷していた。
セバスチャン・ザペタ被告(33)は、カワムさんが眠っている間にライターで火をつけた罪を問われている。被告はシャツで火をあおった後、地下鉄車両の外のベンチに座り、火が大きく燃え上がるのを見ていたという。
大陪審は12月27日、ザペタ被告を殺人罪4件と放火罪1件で起訴した。被告は、事件の記憶がないと主張している。
ニューヨーク市主任検視官事務所のジュリー・ボルサー報道官は、カワムさんの死亡は殺人によるものだったと断定されたと説明。死因は「熱傷および気道損傷」だと明らかにした。
また、「身元は30日、複数の捜査機関との協力を経て、指紋分析によって確認された」と報道官は説明した。
当局がカワムさんの身元を確認できるまでに、1週間以上かかった。
ニューヨークのエリック・アダムス市長は31日の記者会見で、カワムさんが最近、市内のホームレス・シェルターに滞在していたことを明らかにした。
「今回のことは、私が以前から繰り返してきたことをあらためて裏付ける事態だ。人は、この街の地下鉄網の中で暮らすべきではない。ケアを受ける場所にいるべきだ。そして、彼女がどこに住んでいたにせよ、このような事態は起きてはならなかった」
警察によると、22日午前7時30分ごろ、ニューヨーク市地下鉄F系統の、ブルックリンにあるコーニー・アイランド―スティルウェル・アヴェニュー駅で、カワムさんは停止中の地下鉄車内で動かず、眠っているようだったという。その時、ザペタ容疑者がライターを持ってカワムさんに近づいたとされる。
2人は事件前に交流はなく顔見知りではなかったと、警察はみている。
ニューヨーク市警のジェシカ・ティッシュ本部長は、煙のにおいに気付いた警察官とメトロポリタン交通局の職員が現場に駆けつけ、火を消し止めたと述べた。
「対応した警察官たちは当時知らなかったが、容疑者は現場に留まり、車両のすぐ外のプラットフォームにあるベンチに座っていた」と本部長は述べた。
当局は、カワムさんがその場で死亡したと発表した。
ティッシュ本部長は22日、この事件は「人間がほかの人間に対して犯し得る、最も卑劣な犯罪の一つ」だと述べた。
31日に行われた予備審問でアリ・ロッテンバーグ検事は、ザペタ被告が取り調べに対し、飲酒していたため事件を覚えていないと供述したと説明。しかし、火をつける様子が映った写真や監視カメラの映像を見て、映っているのは自分だと認めたのだと、検事は陳述した。
移民当局によると、中米グアテマラ出身のサペタ被告は2018年にアメリカに不法入国し、拘束され、強制送還された。その後、再びアメリカに不法入国したという。
検察によると、次回公判は1月7日に予定されている。
ニューヨーク市の地下鉄は、アメリカ最大の公共交通システム。犯罪の発生は減少しているものの、今回の事件で利用者の懸念は高まっている。
警察によると、31日午後にはマンハッタンのチェルシー地区で、接近する地下鉄の前の線路に男性が突き落とされる事件が発生。地下鉄の安全性が再び問題として浮上している。
31日の事件では、男性被害者は頭部に負傷し、病院に搬送された。男性の身元は明らかにされていない。地元メディアによると、警察は後に容疑者を拘束したという。
(英語記事 Police identify woman set on fire in deadly New York City attack)