2025年1月5日(日)

オトナの教養 週末の一冊

2025年1月3日

 2025年がスタートした。24年は日本では石破茂首相が誕生し、米国ではドナルド・トランプ氏が次期大統領に選出されるなど年後半に変化が目立った年だった。またホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議を始めた例に見られるように、ビジネス・経済面でも新たなうねりが生じている。

 25年はこれら動きが具体化する年になる。世の中の変化にどう対応するか。参考になる3冊を選んでみた。

(Panuwat Dangsungnoen/gettyimages)

先が見えないアメリカ社会を読む

 ドナルド・トランプ氏が再びホワイトハウスの主となる。トランプ氏の考え方が国際政治や国際経済にどんな影響を与えるのか。世界がトランプ大統領の一挙手一投足を神経質に注目する日々が再び巡ってくる。

 現在米国が置かれている状況と二期目のトランプ政権がどんな姿になるのか、米国政治に詳しい早稲田大学の中林美恵子教授が読み解いたのが『混乱のアメリカと日本の未来』(中林美恵子著、マイナビ出版)である。

『混乱のアメリカと日本の未来』
中林美恵子著、マイナビ出版
¥1,199 税込

 トランプ氏は早くも就任前からその発言が物議をかもしている。中国やカナダ、メキシコの製品に高い関税をかけるとの方針や、パナマ運河の通航料の高さに不満で米国に管理権の返還を求める意向を示すなど世界を困惑させている。

 日本としてトランプ次期大統領とどんな関係を結ぶべきかが気になるところだが、著者は日本の取るべき対応について以下のように記す。

 日本としては個別のアプローチも当然ながら、欧州、オーストラリア、韓国と可能な範囲で歩調を合わせることも視野に入れてトランプ政権に丁寧にアプローチしていく必要がある。

 またこうも記す。

 日本が今よりも自立した同盟国として、アメリカの手の届かない空白分野を、埋められるようになることが肝要である。例えば、日本が戦後長年かけて培った外交関係と信頼を生かして、アジアの国々をまとめるリーダーシップを発揮することも、その一つであろう。

 ひとたび大統領に就任するとトランプ氏の言動は世界に大きな影響を与えるため、日本も含めて世界が恐れる向きもあるが、著者の視点で興味深いのは、トランプ氏は非常にわかりやすいという指摘である。打ち出す政策も、アメリカ・ファーストの主張もわかりやすいからこそアメリカ国民に支持されており、日本もそのわかりやすさを自立のきっかけにすればよいという指摘は参考になる。

 アメリカの分断が言われて久しいが、著者は分断には多様な姿があることも示す。貧富の格差拡大が生み出す経済の分断、宗教的立ち位置の違いが生み出す分断、不法移民が生み出す分断などである。


新着記事

»もっと見る