「ごみ収集の仕事で大変だと感じるのはどんな時ですか」
小誌記者が取材を始めるにあたって最初にした質問だ。しかしその後、そんなことを聞いた自分を恥じた。水を飲む暇さえもないほど、目まぐるしく、全てにおいて大変だったからだ。
5月10日午前7時30分。小誌取材班は横浜市港北区にある車庫へ向かった。到着すると、鮮やかな黄色いボディーに「横浜市家庭ごみ収集委託車両」と書かれた大型車両がずらりと並んでいた。春秋商事(神奈川県横浜市)は同市都筑区の缶・ビン・ペットボトルや小型金属、同市緑区のプラスチックを回収する受託業者だ。家庭ごみのほか、産業廃棄物の収集運搬・処分なども行っている。
取材班はこの日、入社9年目の小川貴比呂さん(60歳)と、3年目の日浦秀樹さん(64歳)が乗ったごみ収集車の後ろを車で追いかけ、全95カ所の集積所ごとに、助手席に座った小誌記者が車を乗り降りし、どのような仕事をしているのか、密着取材した。
7時30分、全体点呼を終えると、ごみ収集車はそれぞれの収集ポイントへと向かった。住宅街に入ると、助手席から小川さんが降り、慣れた手付きで集積BOXの蓋を開ける。5袋ほどを片手で一気に掴み、収集車に投げ込んで、「積込」ボタンを押した。このボタンを押すと、収集車がごみを〝飲み込む〟のだ。
あっという間に収集を終えるとすぐに車に乗り込み、次の集積所へ向かう。
取材中、「ここまで手間が掛からないはずなのに」と感じた場面が何度もあった。
ごみ袋の下に十数本の小さなねじが散乱している現場では、2人は分厚い手袋をはめたまま、それを1本ずつ拾い集めて、小型金属用のかごに入れていた。袋の口を縛っていないごみ袋もざらにある。こぼれ落ちたペットボトルが地面に転がり、収集車の下に入り込んだ。取らずに去れば苦情が入るため、日浦さんが車体の下に潜り込み、回収する場面も見られた。