私たちの日常生活に密接に関わる、ごみと水道。しかし、ごみ集積所や水道の蛇口の向こう側で、どのような人々が、どのような仕事をしているのか、意識されることは少ない。12年間、東京23区内でごみ収集員として働くお笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一さんと、水ジャーナリストの橋本淳司さんが語る、ごみと水道の現場で起きている深刻な危機と国民に伝えたいこととは──。
編集部(以下、─)エッセンシャルワーカーという言葉が世の中に浸透したのは、コロナ禍の頃からでしたね。
滝沢 あの頃は本当に怖かったですよ。みんなが我先にと買い占めてしまうから、当初はマスクも着用できませんでした。しかも、ステイホームでみんなが家でご飯を食べるから、ごみの量が圧倒的に増えたんです。「お店のごみがそのまま家から出される」感覚でした。しかも、ここぞとばかりに、不要なものを整理しようという家庭が増え、あらゆるものが捨てられていましたね。結婚式の引き出物や干物が箱のまま捨てられていたり、中には梅酒用の広口瓶がそのまま捨てられていることもありました。しかも、中身は入ったままです……。
当時、環境大臣だった小泉進次郎さんが「ごみ袋にありがとうって書きましょう」と言ったことがありましたよね。世間からは「必要なのはそんなことではない!」「給料を上げろ!」と、相当炎上しました。当然、お金も大事です。ただ、「命がけの作業をありがとう」という手紙をもらったり、ごみを回収すると地面に「ありがとう」という文字が書かれてあることもあって。いわれない職業差別も何度も受けてきたから、そういう言葉が本当に活力になっていました。ねぎらわれることって大事だと思いますね。
お笑い芸人
東京都出身。98年に西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。「THE MANZAI」2012、14年認定漫才師。「THE SECOND~漫才トーナメント」23年準優勝。お笑い芸人としての活動の傍らで、12年よりごみ収集会社に就職。ごみ収集に関する情報を発信し続け、20年には環境省「サステナビリティ広報大使」に就任。
橋本 本当にそう思います。水道について言うと、コロナ禍では、家庭の水道の使用量が増えました。感染症対策としてみんな、せっけんを使って手を洗っていたわけですから。当時は水道の大切さやありがたみをうたうようなCMが流れていたりもしましたが、やっぱり蛇口の向こう側というのは、ほとんどの人がイメージできていない。浄水場で働いている人がいるとか、そういう事実は意識されていないわけですね。
ただ、働いている人たちは過酷で、24時間365日勤務している。しかも、年間2万件の漏水事故が発生するんです。コロナ禍でも関係なく、その対応をやらなきゃいけない。むしろ、衛生を保つために水が必要でしたから。
水ジャーナリスト
1967年生まれ。学習院大学を卒業後、出版社勤務を経て、水ジャーナリストとして独立。93年、アクアスフィア・水教育研究所を設立。現在は武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹などを兼務。近著に『水辺のワンダー』(文研出版)。