今月は「文庫」から5冊の本を選んでみました。
サイズは小さいですが、インパクトは大きいです。
サイズは小さいですが、インパクトは大きいです。
沖縄の歴史
『小説 琉球処分』大城立裕、講談社文庫、990円(税込)
沖縄は今でこそ日本の一部とされているが、それがどのような過程を経てそうなったのか。かつての琉球は中国と日本のどちらかに偏ることなく、バランスを取りながら存在してきたが、明治維新以降、日本は自らの側に偏ること、日本の一部となることを強要する。当然、琉球内部には、混乱と反発が生まれた。本書ではその様子がよく分かる。先の大戦で地上戦が行われ、今も米軍基地の負担が重い沖縄。私たちはその歴史に真摯に目を向ける必要がある(上下巻)。
個人の不在
『日本人は何を捨ててきたのか 思想家・鶴見俊輔の肉声』鶴見俊輔、関川夏央 ちくま学芸文庫 1320円(税込)
ハーバード大学を卒業し、日米開戦後には「負ける側にいたかった」という理由から、「日米交換船」に乗って母国に帰ることを選択した鶴見俊輔。明治国家は、江戸時代には存在した「個人」がつくった「樽」のようなものであり、その樽がしっかりしていたために、日本からは個人が消えてしまったという。つまりは受験エリートのような人ばかりになったのだ。では、個人はどこから出てくるのか。沖縄ではないかと鶴見は指摘している。