韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が「非常戒厳」を宣言したことをめぐり、内乱を首謀した疑いで大統領の拘束令状をとった合同捜査本部の捜査員たちが3日朝、ソウル市内にある大統領公邸の敷地に入り、公邸玄関で拘束令状を執行しようとした。しかし、5時間以上のにらみ合いを経ても大統領警護処が捜索を許可しなかったため、合同捜査本部は同日午後、「令状の執行を中止した」と発表した。今後の措置について検討するという。
合同捜査本部は報道陣に対して、大統領警護処との対峙(たいじ)が継続したことから「令状の執行は不可能だと判断し、本日午後1時半ごろ、令状の執行を中止した」と発表した。
また、「現場のチームの安全を懸念している」、「法的手続きを拒否する被告の態度きわめて遺憾に思う」と述べ、「今後の措置については、検討した上で決定する」と表明した。
令状の有効期限は6日。期限を過ぎた場合、捜査本部はあらためて令状を再請求し、拘束を目指すこともできる。
現場では、捜査員たちが大統領公邸の敷地を離れる様子が、確認されている。
公邸の周辺に集まった大統領の支持者たちは、「勝った!」などと連呼しながら、踊ったり歓声を上げたりした。
捜査員150人を投入
聯合ニュースによると、合同捜査本部から計150人が令状執行に投入された。80人が公邸敷地内に入り、残りは外で警戒に当たった。
公邸を警護する軍部隊は一時的に捜査本部捜査員たちと対峙(たいじ)したものの、国防部によると、捜査員たちはその後、通過したという。
捜査員たちが大統領警護処長に令状を示して執行に協力するよう要請したものの、警護処長は捜索を拒否した。
尹氏の弁護士は、拘束令状に執行差し止めを請求する方針だと声明で述べた。
大統領の弁護団は昨年12月30日、非常戒厳の宣布は、憲法が定める大統領権限の範囲内だとし、捜査当局には尹氏を逮捕する権限はないと述べている。
尹大統領について、警察や政府高官などの捜査を担う「高位公職者犯罪捜査処」の合同捜査本部は12月29日、内乱を首謀した疑いで大統領の拘束令状を請求し、ソウルの地裁は同31日に令状を発付した。韓国の現職大統領に拘束令状が発付されるのは、憲政史上初めて。
尹大統領は12月3日夜に「非常戒厳を宣布する」と発表したものの、与野党議員がこれに反発したため、翌朝には非常戒厳を解除。14日に弾劾され、職務停止となっている。
尹氏はその後、内乱と反逆の疑いで捜査されているものの、これまで捜査当局による再三の出頭要請に応じていない。
尹氏は同12日のテレビ演説で、非常戒厳を宣布したことの正当性を訴えた。民主主義の「崩壊を防ぎ」、野党による「国会の独裁」に対抗するための合法的な判断だったと主張し、「弾劾されようが、捜査されようが、私は断固として対抗する」、「最後まで闘う」とした。一方で、「法的および政治的な責任」を回避するつもりはないと述べた。
尹氏の弁護人、尹甲根(ユン・ガプグン)弁護士は、大統領が3度の出頭要請に応じなかったのは「正当な懸念」があるからだと述べていた。大統領は出国禁止となっている。
(英語記事 Investigators halt attempt to arrest South Korea's president amid dramatic standoff/Attempt to arrest S Korea president Yoon suspended)