2024年5月23日(木)

田部康喜のTV読本

2023年10月7日

 NHKスペシャル「“冤罪”の深層~警視庁公安部で何が~」(9月24日)は、検察が起訴取り下げという異例の事態となった“冤罪事件”を追求したドキュメンタリーの最高傑作である。ノンフィクションの白眉ともいえる。

(djedzura/gettyimages)

捜査員による衝撃的な証言

 2020年3月11日、機械メーカーの中小企業である大川原化工機(横浜市都筑区)の大川原正明社長ら3人が、軍事転用可能な機械を中国に不正輸出した容疑で逮捕された。その機械とは、同社の主力製品である「噴霧乾燥機」である。

 液体を噴霧状にして熱風によって粉状に加工する。粉ミルクや医薬品の製造に使われている。乳酸菌の一部の菌は生きたままの状態で粉状にすることも可能である。

 警視庁公安部外事第一課の第五係が大川原社長らの逮捕という“冤罪”の事態を招いた。取材班は公安部内でいったい何が起きていたのか、捜査は“冤罪”に至る前に止めることはできなかったのか、独自に入手した捜査資料を読み解くとともに、警察関係者らにインタビューした。

 刑事事件は起訴の取り下げとなり、大川原加工機側が原告となって国と都を被告とする民事訴訟の場に移っている。この訴訟は東京地裁で9月15日に結審し、12月27日に判決が予定されている。

 6月30日の証人尋問のなかで、原告側の弁護士がこの事件を担当した第五係の捜査員X警部補に対して「事件をでっち上げたというふうに言われても否めないんじゃないかなと」と尋ねると次のような衝撃的な証言を引き出した。

 「まあ、ねつ造ですね。捜査員の個人的欲というか動機がそうなったんではないか」

 ちなみに訴訟の証人となった第五係の係長の警部とX、Y、Zの各警部補のうち、XとYの2人だけは“冤罪”の認識を法廷で表明している。

 取材チームが掘り起こした数々の事実は、この事件の裏で起きた特異な事象と、歴史的に“冤罪”事件を生む構造的な問題点を浮き上がらせる。


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