米ネヴァダ州ラスヴェガスにある「トランプ・ホテル」の外で、米電気自動車(EV)大手テスラ製の「サイバートラック」が爆発した事件について、捜査当局は3日、車両内で発見された男性はドナルド・トランプ次期米大統領に敵意を持っておらず、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんでいた可能性があると述べた。
車内で死亡していたコロラド州コロラドスプリングス出身の現役米陸軍兵士、マシュー・アラン・リヴルスバーガー容疑者(37)は、家族問題や個人的な不満にも悩んでいたという。
FBIはまた、1日にルイジアナ州ニューオーリンズで14人が死亡した致命的なトラック攻撃、ラスヴェガスでの爆発とは無関係だと強調した。
警察は、ラスヴェガスの爆発は「悲劇的な自殺」のようだと述べた。
ラスヴェガスのFBI捜査官スペンサー・エヴァンス氏は、「これら二つの事件が関連している証拠はない」と記者団に語った。
また、「捜査の結果と陸軍の情報によれば、リヴルスバーガー容疑者はPTSDに苦しんでいた可能性が高く、他の家族問題や個人的な不満があった可能性があることも認識している」と、エヴァンズ氏は説明した。
リヴルスバーガー容疑者の携帯電話から発見されたデータには、同氏が書いたと思われる複数のメモが含まれていた。戦闘中の経験に関連するPTSDに苦しんでいたことを、うかがわせる内容だったという。
このメモには政治的な不満も書かれており、同僚の陸軍将校に対して軍の指導部を批判するよう呼びかけていた。
別のメモでは、同容疑者がこの事件を「テロ攻撃ではなく、警鐘である」と具体的に書いていたと、警察は述べた。
この事件では、現地時間1日午前8時40分ごろ(日本時間2日午前1時40分ごろ)、燃料缶と花火砲が積み込まれたサイバートラックが爆発。運転席で1人の遺体が発見された。
リヴルスバーガー容疑者の身元は、当局が家族から取得したDNAサンプルによって確認された。
警察は、同容疑者が自ら銃で撃った傷も負っていたようだと述べた。
リヴルスバーガー容疑者は、数十年にわたりアメリカ軍に勤務。陸軍と州兵の両方で働き、特殊部隊の情報軍曹として勲章を受けていた。
直近の勤務地はドイツだったものの、事件当日は休暇中だった。
リヴルスバーガー容疑者の父親は、BBCがアメリカで提携するCBSに対し、容疑者は妻と8カ月の娘に会うためにコロラド州にいたのだと明らかにした。
また、クリスマスに息子と最後に話した時は、何もかも普段通りで正常に思えたと話した。
リヴルスバーガー容疑者の元恋人は米紙ワシントン・ポストに対し、同容疑者が海外派遣中に外傷性の脳損傷を負ったと話していたことを明かした。
2018年から2021年にかけて同容疑者と断続的に交際していた看護師のアリシア・アリット氏(39)は、同容疑者が記憶力や集中力について悩んでいたほか、戦場での自分の行動について強い罪悪感を抱えていると認めていたと述べた。
他方、米紙デイリー・ビーストは、リヴルスバーガー容疑者がトランプ次期大統領の熱烈な支持者だったと報じた。同容疑者の家族と話した高官によると、同容疑者は11月の大統領選でトランプ氏に投票したという。
警察は、監視カメラやテスラ車両自体から得られたデータから、事件直前のリヴルスバーガー容疑者の動きを追跡することができた。
当局によると、リヴルスバーガー容疑者は昨年12月28日にコロラド州でレンタカーアプリ「Turo」を通じてテスラのサイバートラックをレンタルし、約1300キロを運転してラスヴェガスに向かった。また、その期間中に合法的に銃器2丁を購入していた。この銃器は車内で発見された。
ラスヴェガス警察署のケヴィン・マクメイヒル保安官は、リヴルスバーガー容疑者がなぜトランプホテルの外を爆発現場に選んだのかはまだ判明していないが、同容疑者が複数の場所を検討していたことをうかがわせる証拠があると話した。
また、この爆発によって7人が軽傷を負ったが、全員がすでに退院したと保安官は述べた。
その上で同保安官は、捜査は継続中で、警察が回収したデータは「まだ表面をかすめた程度」だと付け加えた。
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